3. 地球規模および国境を越えた影響
3.1 酸性雨に関する現在の研究
酸性雨が重大な環境上の問題である一方、自動車は世界的なスケールでみればこの問題の最も重要な部分ではなく、特に硫黄のエミッションが問題なる地域で、このことがあてはまる。アネックスVIIの最終報告書で述べられているように、輸送部門は人為的な窒素酸化物エミッションの44%を占めるが、人為的な硫黄酸化物エミッションについてはわずか数パーセントを占めるに過ぎない。また、自動車から排出される硫黄酸化物や窒素酸化物を削減する技術はかなり開発されており、欧州と米国においてはこうしたエミッションは、基準によってコントロールされている。
しかしながら、アジアにおいては石炭火力発電所のような大規模施設が酸性雨の主要な発生源と考えられており(Qi、Hao、およびLu、1995年;Seipその他、1995年)、自動車のデータが少ないことと、ならびに窒素酸化物のエミッション管理にかかるコストが高いことから、酸性雨に対する自動車の関与についての研究はあまり行われていない。1995年には、2020年までに中国の二酸化硫黄排出量は、欧州あるいは米国を上回る可能性がある、との報告が発表されている。
3.2 地球規模の影響に関する包括的な分析
酸性雨と地球温暖化の分析に関して、もうひとつの重要な進展として、2つの現象の間の関係を検討する統合アプローチの進展が挙げられる。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はとりわけ硫黄エミッションから生み出された霧状物質が、太陽光線を反射し雲の活動を変え、地球温暖化の効果を緩和するとの見解を示していることから、この関係は重要である(IPCC、1992年)。(IPCC研究の結果はアネックスVII最終報告書の第2章の1.2.3にまとめられている。)
1995年には、硫黄のエミッション、酸性雨および気候変動に関するコンピュータ・シミュレーション研究の暫定結果が公表されている。この研究は欧州地域(旧ソビエ卜連邦共和国ならびにEC加盟国を含む)のみを対象としており、シミュレーション期間は1990年から2100年である。シミュレーションに用いられたエミッションは世界1-3地域に分割されたとエコシステムに与える影響を検証する目的から、(酸性雨と温度の組み合わせによって影響がどう違うかを考慮するため)植物の変化を観察することを通じて、気候変動の影響について想定が行われている。ここでは、二酸化硫黄の減少に関して2つのケースが想定されている。ひとつは1990年以降、二酸化硫黄エミッションの管理は行なわれず、エネルギー消費(燃料混合あるい