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しかし、上述のように、介護保険に定められた現物給付額は微々たるものにすぎないので、実際の日常の在宅介護という労働の完全な報酬とはなりえず、その補足でしかない。なお、多くの場合、ヘルパーに来てもらっても、家族の介護者の手助け(ベッド作りや入浴など)も同時に必要なようだ。

そのためであろうか、ドイツでは日本のように「ケア・プラン」をめぐる討論はほとんど聞かれない。ほとんどの州においてはサービス機関や特養自体が行っており、苦情の場合のみメディカル・サービスがそれを行うことになっているという。

従って、要介護程度があまりひどくなく、また要介護者との関係が昔からうまくいっていた者、心から「介護をしたい」と思う者、自ら退職しているか高齢の者(この数は約50%と推定されている)、そしてなにかの理由(例えば育児など)でどうせ家にいる者は現金給付を選んでいる。その方が、自分の好きな時に、好きな人に来てもらえるとか、かえって他人が来ると気を使うなどの理由を挙げる者もいる。その他に、介護をしているという社会的承認があるとか、「義務をはたしている」、「おかえしをしている」などという「自己満足感」があるという意見もある。実際に、介護は社会的労働として見られることとなったので、介護者の年金も毎月貯蓄されていく(ちなみに現金給付400マルクに対して200マルクが毎月年金額として支払われている。図表35参照)上に、労災保険もきくようになっている。なお、現金と現物給付の組合わせもあるが、これ以外に、現物給付で余った金額は割合計算で現金給付として要介護者に支払われる仕組みにもなっている。

 

図表35 ドイツにおける介護者の高齢保障のために介護金庫から法的年金保険に支払われた保険料の一覧*)

 

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*)1997年7月以後。年金保険料率20.3%と算定限度 旧西ドイツ:4,270マルクと旧東ドイツ:3,640マルクを基に計算。

資料:Deutscher Bundestag-13.Wahlperiode,Drucksache 13/9528,1997.

 

 

 

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