日本財団 図書館


施設介護給付の受給者の中には「程度III」から「程度II」に格下げ(サービスの削減)になった者が多いのは注目すべきであり、その中には「寝たきり老人」状態の者もだいぶ合まれているからである。日本の「要介護度の5」が「4」に格下げになったと考えてよいだろう(図表28参照)。なお、興味深いことに、要介護認定において、民間介護金庫の方が公的介護金庫より寛大であるといわれていることである。拒否される申請の数が後者の半分であった(図表29参照)。

介護保険の財政収支については、制度導入後現在までの3年間についてみると、毎年収入超過が続いている。しかし、1年目の1995年には収入のみで支出のない期間(「クッション」)が3か月あったことと、「介護保険」のサービス内容が国民にあまり浸透していなかったこともあったので、現在約100億マルクといわれている黒字も将来的には、今後減って行くものと見られている(図表30参照、1997年の数値は半年分なので注意を要する)。

ちなみに、黒字に乗じて、自営業者の利益を代表する自由民主党(FDP)が1998年の春、介護保険料率を0.2%減少せよと提案したが、他の政党に反対されて、すぐ撤廃している。また、1998年9月民間介護保険会社は、若い被保険者を対象に1999年1月より保険料率を下げることを発表している。

なお、1997年の連邦報告書によると、「在宅介護サービス機関」(介護保険導入以前は通常「ソーシャル・ステーション」と呼ばれていた)の数、そして介護マンパワーの数も充足しており、なかにはハンブルグ特別市(州と同等)のように過剰(Uberangebot)になっているところもある(図表31参照)。

また、介護保険の問題点とされている「痴呆性老人の認定」(落ちこぼれ)の問題については、この報告は、老衰や脳神経退化による要介護認定の申請もかなり認定されていると述べている。(図表32参照)

 

4. 介護保険導入についての評価

 

以下は、1990年来、介護保険の導入に積極的に係わってきた政策与党CDUのブリューム氏(労働社会大臣)をトップとする連邦政府介護保険部関係者が導入後3年半を経た現在、介護保険をどう見ているかを先ず紹介する。答えてくれたのは、その基本原則作りを担当した課長のバーダー氏で、1998年8月の時点で保険導入後3年半の総評価(何点かにしぼって)である。ドイツ型介護保険についての作成者の基本的考え方がここに集約されていると思われる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION