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14)ドイツではある程度の財政的余裕(「クッション」)を確保するために、介護保険を段階的に導入した。即ち1995年1月1日より保険料のみを徴収し、同年4月1日より在宅給付を、そして1年3か月後の1996年の7月1日から施設給付を開始した(Schraa 参照)。

日本では2000年の4月1日よリー気にこれらを導入する予定と聞くが、業務の主体となる自治体の役割は厳しいものとなろう。但し、日本では要介護認定の手続きを半年前に開始することとしており、これはドイツのメディカル・サービスの経験からして、賢明だと思われる。

このように、一応、ドイツを先行モデルとして日本に導入されようとしている「介護保険」であるが、相違点もかなり目に付く。その相違点の善し悪しは置いて、その違いは互いの生活文化や社会システムの違いであり、文化的特徴を知る目安とも思えるが、こうした両国の制度改革が相互になんらかの良いとントや影響を与えてくれることになるであろう。

 

3. 介護保険の実施状況(現状の数値的概略)

 

介護保険導入後3年たった1997年12月に「第一次報告等」が連邦、つまり国のレべルから発表された。約100億マルクの黒字を出している保険分野ということもあって、かなり自信のあふれた、肯定的な評価といえよう。

まず、この間の数値的推移をいくつか見ると、公的介護保険に関わる現在の要介護者数は約170万人である。3年前は165万人であったことからみてほぼ変わらない数である。その内訳は、在宅要介護者数が124万人、施設要介護者数は45万人であり、3年前のそれぞれ120万人と45万人という数とほとんど変わらず、施設介護給付が可能であるにもかかわらず、在宅が増えているのは「在宅介護優先原則」のためとうかがわれる(図表28を参照。但し、ここにおける数値は公的介護保険のみなので注意を要する)。

要介護者の程度による区分の認定については、上述のとおり、この3年間では格下げが目立ち、特養では「程度0」、つまり介護保険給付の対象からはずされてしまった者も現れたが、その中には「痴呆性老人」が入ることもあったといわれている。

しかし、依然として、在宅介護給付の受給者(現金と現物給付を合めて)は、「程度I」が一番多い。日本式にいう「要介護度1、2、3」在宅介護で多いということになろう。

 

 

 

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