そして今後において、予測されるヨーロッパ域内での競争がもたらすコストの削減や大量生産などによって、医療支出が節約できるものと期待されている。実際に欧州連合は価格安定対策を奨励している。しかし、こうした状況にドイツの政党や疾病金庫はあまり性急な期待をしていないようである。なぜならば、これまで国として、連帯共同体の精神に基づいて構想された公的医療システムが、国境をなくすことで、崩壊する不安もあるからである。
11)なお、提案として公的医療金庫の給付を制限せよ、というのがある。これは、効果が実証されていない治療等への給付、健康の些細な症状、個人の無責任な生活に起因する病気、その他些細な疾病とは認めがたい給付については、それを保険の対象から除外しようというものである。オランダとスイスはすでにこのような対策を実施している。しかし、これによって、どれだけの節約が現実に達成できるかは明らかではなく、その上、給付排除の基準を設けることは容易でないとドイツでは思われているからである。
12)そして、すでに長い間実施されている対策だが、患者の入院費、薬剤、補助具、そしてメガネ、補聴器、車椅子、移植器などにかかる費用の自己負担分についての課題がある。この負担を増すべきか否かは現在、再び検討されている。増加しているこの種の費用給付額を削減するためだけでなく、自己負担分を増やすことによって忠者の健康に対する責任感と保健医療給付に関する意識も高めようと考えられている。これまでの経験が示すように、医療費の負担はともかく患者にしわよせする結果になってしまってもいるが、しかし、不必要な需要に絶えずブレーキをかけ、他のもっと健康維持に重要だと見られる給付に人々の目を転じさせることではこうした対策論議や施策の運び方は有効だと見られている。(Sachverst ndigenrat...参照)
4 公的介護保険
1. 制度の導入にあたって
ドイツにおける介護保険をめぐる論議は、それが1995年に導入されるまで、長い歴史を有する。そもそもの契機となったのは、1974年に、ケルン市に所在する高齢者問題を研究するNPO(非営利団体)機関が要介護高齢者の介護を改善すべきだ、と主張しだしたことだった。その後、高齢者福祉問題を論議する中で、「要介護リスク」