日本財団 図書館


1. スウェーデンの年金改革については主としてMinistry of Hcalth and Social Affairs,Sweden(1994)(1995)を参照した。井上(1996)も有用である。

2. 掛金建てと給付建ての違いを論じた基本的論文にBodie et al.(1988)がある。

3. みなし運用利回りを実際どう決めるかについては現在も検討中である。一国全体の賃金支払、総額の伸び率とする案が有力視されているが、労働者1人あたり賃金の伸び率とする案も依然として残されている。

4. イタリアも、このスウェーデン方式(給付算式を掛金建てに切りかえる一方、賦課方式は維持する)を採用することになった。Raynaud-Hege(1996)参照。

5. 年々の給付スライド率は[(物価上昇率)+(賃金上昇率-1.5%)]に等しく設定される。この1.5%は1970年以降における生産上昇率の実績を勘案した数値である。

6. 例外はイギリスのみである。イギリスはサッチャー政権時代に最低賃金法を廃止し、低賃金労働者に対する社会保険料負担を軽減するなど、雇用拡大に向けて大胆な措置を積極的に講じた。近年、イギリス経済が比較的好調なこともあり、イギリスの失業率は低下気味に推移している。

7. 1990年に東西ドイツは統合された。公的年金も旧西ドイツの制度が旧東ドイツの労働者にも適用されることになり、年金制度を通じた大規模の所得移転が東西ドイツ間で行われるようになった(ちなみに1995年の所得移転額は159億マルクであり、年金保険料1%超に相当していた)。年金保険料の引き上げが失業率上昇の一因になったともいわれている。下和田(1995)参照。

8. この間の事情は松本(1996)、田中(1997)が詳しく報告している。

9. 詳細はSchmahl(1993)を参照。

10. 年金保険料を引き上げ、その代わりに付加価値税を増税するという形の年金財源シフトはすでにスペイン・ボルトガルで実施済みである。

11. もっともドイツ政府は今回の給付調整を「切り下げ」とはいっていない。「平均余命が伸びた分だけ、より長期の年金受給期間に分配される」と述べている。

12. イギリスの1986年年金改革は高山(1992)を参照。

13. イギリスの1995年年金改革ではマックスウェル事件をうけて企業年金に関する受給権者保護措置の具体化、適用除外年金の物価スライド義務強化(3%以下を5%以下ヘ)、拠出建て年金にかかわる免除料率の年齢改装別設定等も行われた。詳しくはDepartment of Social Security,the UK(1995)参照。なおイギリスにおける最近の年金問題についてはDilnot,A.et al.(1994),Johnson,P.et al.(1996),Government Actuary's Department,the UK(1995)も有益である。

14. サッチャー政権が企業年金・個人年金による適用除外を積極的に推進した結果、政府管掌の賃金比例年金(いわゆるSERPS)に加入している賃金労働者は全体の20%(1991年)にすぎない。ほかはすべて政管制度から適用除外となっている。なお賃金比例年金は制度実施が1978年と遅かったこともあり、公的年金給付総額の6%強を(1994年度)を占めているにすぎない。この点は日本と大きく違う点である。

15. Peterson(1996),Diamond et al.(1996),Advisory Council on Social Security,the US(1997)など参照。

16. チリの年金改革についてはDiamond-Valdes-Prieto(1994),Myers(1996)など参照。

17. オーストラリアの年金改革についてはEdey-Simon(1996)参照。

18. World Bank(1994)参照。世界銀行の提言は公的年金の専門家から「危険な戦略」という批判を浴び、大論争を巻き起こした。Beattie-McGillivray(1995)(1996),James(1996)参照。

19. たとえばFeldstein(1996)(1997),Feldstein‐Samwick(1997),Kotlikoff(1996),Peterson(1996)準を参照。フェルドスタイン教授の場合、は年金積立金の運用収益に法人税や事業税を賦課しないことをまず想定し、年金の実質運用利回りを年間9%と仮定する。この運用利回りは過去35年間のアメリカの実績に基づくものである。この利回りが今後とも長期間にわたって実現すると仮定すると、移行に伴う負担の増分は当初、月給の2%ですますことができ(現行12.4%の「2倍の負担」にはならない)、長期的には年金保険料そのものを2%の低水準にまで引き上げることが可能だと主張している。ただ移行時40歳以上の現役組は年金負担増となる。このことを指摘することも忘れてはいない。また投資収益に伴うリスクをどうすれば軽減できるか、低賃金労働者等についても不利益が生じない方策を具体的に提案している。

フェルドスタイン教授の提案に批判がないわけではない。9%の年間実質利回りはいくらなんでも高すぎる、積立令の運用収益を非課税とすることで穴のあく法人税・事業税の税収を別途どう確保するか、等々。

20. たとえばDiamond(1996)を参照。

21. この点でもっとも要領を得た解説をしているのはMyers(1996)である。なお後述するように日本でも最近、賃金比例年金の民営化を求める声が急速に強くなっている。ただし、その民営化はアメリカの公的年金民営化に伴う問題とほぼ同様の問題を生じさせる。民営化に伴う問題点は本稿3.3節で述べる。

22. ドイツの年金保険と介護保険の関係は以下のとおりである(現行の取扱い)。まず年金給付は介護が必要な状況が発生しても増額されない。また介護サービスをうけるさいに生活保護の適用をうけると、年金受給額はすべて収入認定の対象となる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION