年金受給者の介護保険料は半分を本人が負担し、残りの半分は年金保険者が負担している。一方、介護サービス提供のために休職した従業員の年金保険料は介護保険の保険者が負担する。これは年金受給資格をつなぐための処置であり、生涯平均給与の75%相当が「みなし賃金」として扱われている。
23. 高山・有田(1996)を参照。
24. この点は社会保障財源の選択問題を議論するさいにも留意する必要がある。所得課税・社会保険料(賃金税)・消費課税のうち成長阻害度がもっとも低いのはどれか。それは実は消費課税である。消費課税は貯蓄・投資に課税しないからにほかならない。社会保障財源を拡充する必要がある場合、消費税の税率アップ(ないし消費税の一部を社会保険特別税とし、それのみの税率アップ)を図ることを検討すべきだろう。スペイン・ポルトガル・ドイツではすでにこの方向への転換が試みられた。
25. 高山(1992)参照。
26. この金額は割引率の設定次第で異なる。なお「未積立債務」は年金が積立方式で運営されていたり積立方式に運営を切りかえたりするさいに生じる。年金が「世代と世代の助けあい」の制度に基づいて運営されつづけるかぎり「積立債務」は生じない。子供が年老いた両親を世話するさいに必要となるお金を「積立債務」というだろうか。
27. 積立方式への切りかえを主張する論者はどういうわけか厚生年金をはじめとする企業年金や各種個人年金の苦しみに対して目を閉ざしている。
参照文献
井上誠一(1996)「スウェーデンの年金改革」『季刊年金と雇用』15(3)。
下和田功(1995)『ドイツ年金保険論』千倉書房。
高山憲之(1992)『年金改革の構想』日本経済新聞社。
高山憲之・有田冨美子(1996)『貯蓄と資産形成』岩波書店。
田中耕太郎(1997)「ドイツの経済構造改革の中での年金制度改革をめぐる動向とその将来像」「山口県立大学社会福祉学部紀要』3号。
松本勝明(1996)「経済成長と雇用拡大のための年金制度改革」『季刊年金と雇用』15(3)。
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Beattie,R.and McGillivrey,W.(1995),"A Risky Strategy:Reflections on the World Bank Report Averting the
Old-Age Crisis,"lnternational Social Security Review,48(3/4).
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