奨学金制度も大幅に見直す。現在、高等教育サービスの供給機関に流されている公費(いわゆる機関補助)のつけ方も変える。原則として供給サイドではなく需要サイドに一括して奨学金として流し、消費者重視に方向転換するのである。
さらに保育所の位置づけを「児童に対する支援施設」から「子育て中の女性就業を支援する施設」に変えたり、保育費控除を所得税制のなかに導入したりすることも検討してよいだろう。無論、保育所設立規制を大幅に緩和することも必要になる。乳幼児の医療費についても窓口負担の低料化を図る必要がある。
ことはお金の話だけにとどまらない。母親の肩にかかる育児負担を軽減するためには、父親が育児に積極的に参加できる環境づくりをする必要がある。会社への長すぎる拘束時間をどう減らすか、従来の仕事の仕方、会議の仕方を改め、仕事自体の時間密度を上げる必要がある。デスクワーカーの勤務時間・勤務場所もフレックスにしなければならない。
通信メディアの発達で、この点は容易になりつつある。個室育ちの従業員が多数派になりつつある今、大部屋オフィスを改め、企画部門や研究部門には電話に邪魔されないプライベート空間を用意することも必要となるだろう。
会社への長すぎる拘束時間を減らすためには、時間外労働の賃金を通常の1.5倍(ないし2倍)に引き上げるというのも一つの方法である。経営者サイドは時間外労働の管理を従来より厳しくせざるを得なくなる。そしてその分、通常の時間帯にもう少しきちんと働くことが促される。勤務時間の長さを基本にした業績評価システムも時代の要請にあわせて実績ベースに変えていかざるを得ない。
さらに男女間の雇用平等に向けた取りくみをさらに推進していく(たとえば育児休暇を父親が最低1ヶ月はとる、あるいは育児休業期間中に週のうち半日でも出勤して仕事の継続を容易にする等)必要がある。くわえて子供の「熱だし休暇」や「誕生日休暇」を新たに親に認める(子供も学校等を休む)ことも検討に値する。
その昔、日本に徴兵制があった時代において徴兵された従業員は復帰後いっさい処遇面で不利益を受けなかったという。子育てのために、しばらくの間だけ企業を離れることは、今日、この「徴兵」に近いといえないだろうか。
人口減少社会対策は20年30年先の日本をみすえた大戦略であり、厚生省や労働省・文部省だけにまかせておけば良いという問題ではない。官邸主導のもとに、行政(国と地方)も企業関係者も今から総力をあげて取りくまないと手遅れになるおそれが強い。