明治以降、日本では富国強兵のため「産めよ殖やせよ」路線をつっぱしってきた。日本の総人口は明治初年には3400万人であったが、終戦の年には7200万人に達していた。80年たらずの間に人口は2.1倍にふくれあがったのである。国内におけるこのように急激な人口膨張は結果的に対外圧力を生みだし、近隣諸国の人びとに癒しがたい苦痛を与える一因となった。その反動から戦後、出産や子育てに対するきわめて消極的な政府のスタンスが生みだされ、それが今日にいたってもなおつづいている。
政府の基本姿勢は戦後に大転換した。それにもかかわらず日本の人口騰勢は衰えなかった。1975年における日本の総人口は1億1000万人となった。戦後の30年間で4000万人弱の人口増をみたのである。
その後、人間騰勢はにぶりはじめ、1996年時点で日本の総人口は1億2600万人となっている。この総人口が、ほぼ10年後に1億2800万人前後に達してピークアウトし、その後は一転して減りはじめる。減り方には複数のシナリオが予想されるものの、1997年1月に国立社会保障・人口問題研究所から発表された新推計の「低位推計」(合計特殊出生率は2005年の1.28まで低下した後、反転すると仮定している)によると2100年における日本の総人口は5100万人弱になる。今後100年で日本の総人口は半減する、あるいはそれ以下になるというのである。
人口が減少しても構わないではないかという意見もある。現に小国でありながらも豊かさを享受している国がスイスをはじめとしていくつかある。問題は豊かさを維持したまま、現在の日本を相似縮小化した姿に移行できるかという点にある。
人口が減ると、日本の社会経済はどうなるか。まず人口減少社会では労働力人間も減少する。特に30歳未満の若年労働力が激減する。労働者総数が減少する中で労働力は中高年組が主体となる。
若年労働力は新技術の中心的な担い手である。中高年組は総じて新技術への適応力が弱い。投資マインドも徐々に減退していくおそれがある。貯蓄率も低下し、人口減少で国内市場も伸び悩むことになるだろう。こうしたなかで日本経済は徐々に衰退していくおそれが強い。
女性や高齢者の労働力に期待する声もある。あるいは外国人労働力を本格的に国内に入れたらどうかという意見もある。たしかに女性労働力にはこれからも期待できるものの、高齢者に多くを期待できるだろうか。外国人労働力への期待が大きいことも確かだが、それはそれでまた別の問題を発生させる。
日本経済が衰退すると、現役世代の生活水準は低下するだろう。子供のいない社会は実は日本にもすでにある。それは過疎地である。若者がいないために子供がいない。子供の声が聞こえない。そのような社会で何が起こっているかを想像してみたらいかがだろうか。