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ただし保険者(ないしその連合体)がみずから専門家(医師集団)を擁して技術評価能力を高めることができれば保険医や病院の選別も可能となる。保険者に保険医自由選択権を認め、診療報酬にかかわる保険契約も自由化する。そうすると保険医・保険医療機関として指定してもらっても、保険者から選択され契約を結ばないと診療や治療は事実上できなくなる。保険医や保険医療機関の間ぞ医療サービス競争が起こり、質の向上やコストの引き下げが行われるようになる。無論、保険契約を自由化すると、いわゆるハンドリングコストは現状より増大するだろう。その増大を償って余りがあれば保険医自由選択制や保険契約の自由化は試みるに値する検討課題である。

究極的には被保険者が保険者を選択できるところまで進むことが望ましい。ただし保険者自身は被保険者を自由に選択できないこと、強制加入制度を残すこと、保険者内では均一の保険料負担体系を保持すべきことなど、日本における従来の仕組み(の1部)はメリットも少なくない。したがって、その廃止には慎重にならざるをえないだろう。

社会保険医療の守備範囲も見直すべき部分がある。入院に伴う食事代の一部は近年、社会保険医療の対象外となったが、食事代はすべて社会保険医療の対象外とすることを引きつづき検討してよい。また入院に伴う家賃相当分も生活費であり、社会保険医療の対象からはずしてはどうか。

社会保険医療費の節約のためには患者の窓口負担をさらに引き上げる必要がある。とくに高齢者を従来特別扱いしてきたが、その必要性は今日、乏しい。非高齢者と同様とした上で、高額療養費還付金制度を活用すればよいと思われる。また薬剤費については別枠の低い給付率(高い自己負担)を検討する必要がある。

日本の薬剤比率は欧米諸国とくらべると高い。その抑制のためには需要サイドヘの働きかけだけでなく、診療報酬のマルメ化(定額制)や総枠規制を一部の診療行為に適用するなど供給サイドヘの働きかけも有効だと思われる。

高齢者医療も見直すべき余地が大きい。いわゆる介護相当分は分離独立させて新設の公的介護保険に吸収することになるだろう。そのさい公的介護保険における基本的考え方、すなわち高齢者については個人単位の加入とし各自保険料を負担する(年金給付からの天引きが原則)ことを高齢者医療についても検討する必要がある。

 

2.7 出産・子育て支援

 

日本では出生率低下の動きが急である。日本の合計特殊出生率(女性が一生の間に平均して何人の子供を生むかを推計した値)は1949年まで4.0〜5.0の水準をほぼ維持していた。

 

 

 

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