消費税は子供も年金受給者も負担するので現役組の年金負担(年金消費税込み)は総じて軽くなるだろう。消費月額30万円とすると3.3%の年金消費税は1万円弱である。これは1人分の国民年金保険料(1万2800円)より少ない。高額所得者や高額資産保有者で贅沢な消費生活をしている場合はネットで負担増となる。年金受給者もネットで負担が増える。現時点における現役・OB間の所得バランスを考えると、この負担増はやむを得ないのではないのか。年金受給者となっても、年金制度へ応分の貢献をしつづける。全体として青壮年期における過度の負担が緩和され、ライフステージごとの負担が従来より平準化される。
97年度において民間サラリーマン加入の厚生年金は基礎年金用に5兆1500億円を保険料収入から拠出していた。保険料率にして約4%に相当する負担である。基礎年金財源を年金消費税に切り替えると、厚生年金の保険料は約4%引き下げることができたはずである。結果として民間企業事業主の年金負担は約2兆5700億円減る。これは同規模の法人事業税減税と同じ効果を持つ。
年金消費税率はピーク時にはどの程度になるか。現行給付を維持する場合、2025年度の所要額は20.1兆円であり8.2%に相当する(97年度価格)。ただし給付水準を見直し、スライド方法を変え、富裕テストつきとすれば、所要額は減る。ピーク時5〜6%の年金消費税でも皆年金の名に恥じない給付を賄うことができるだろう。
いずれにせよ財源切りかえは、その気にさえなれば実現可能である。
スペイン・ポルトガル・ドイツでは最近あいついで年金保険料を引き下げ、その代わりに付加価値税(日本の消費税に相当)の税率を引き上げた。フランスもCSG(社会保障目的税)を導入して年金保険料を引き下げている。消費税への年金財源シフトは、このような世界の潮流にも合致している。
2.6 医療保険改革
日本では「マーケットメカニズムを医療分野で活用することはよくないことだ」と考える者がこれまで多かった。生命にかかわる分野と私的利益の追求は相いれないとはじめから決めつけていたためである。しかしマーケットメカニズムは資源の効率的配分に資することが知られている。そのマイナス面に留意しながらマーケットメカニズムを医療分野でも活用することを前向きに検討する必要があるのではないか。
たとえば今日、日本では保険者は財源調達機関と化しており、保険者の有すべき他の機能をほとんどはたしていない。国や都道府県知事の指定する保険医や保険医療機関がレセプ卜を送ってきても、それをチェックし評価する能力を通常、有していない。