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その理由は主として二つある。第1に国民年金保険料は定額制である。定額保険料は逆進性がもっとも強い人頭税の一種にほかならない。定額保険料は低所得階層には負担感が強く、保険料引き上げがつづくと無理が生じてしまう。他方、高所得階層にとって定額負担は必ずしも困難ではないものの、定額給付(基礎年金)の必要性はそれほど大きくない。とくに個人年金の方が国民年金よりもメリットが大きいと考えるようになると、その者が国民年金の保険料納付を拒否しても決して不思議ではない。

第2。保険料の強制徴収が事実上きわめて困難であり自主納付の形となっている。この点はすでに述べた。

未加入や滞納を解消しようとすれば、行政費用を最小限に抑えながら、この二つの問題をどうしても解決する必要がある。それは可能だろうか。

定額保険料制が早晩、壁に突きあたることは61年の制度発足当初からすでに知られていた。所得比例の年金保険料とならなかったのはクロヨンがあったからである。非サラリーマンの所得を正確に把握することは今でも容易でない。この点はどの国でも同じである。

保険主義にこだわるかぎり国民皆年金の夢は実現しない。これが今日における世界の常識である。保険主義に執着するのであれば、国民皆年金という旗は降ろさざるをえない。

世界の主要国は、いずれも保険主義の考え方を捨てて国民皆年金(定額年金)を実現している。皆年金の空洞化を議論している国は今日、日本以外にない。

皆年金は税方式を採用すれば実現可能である。日本の現実を踏まえるとどうなるか。

能力に応じた年金負担は所得をベースとしなくとも可能である。消費支出をベースにすればよい。年金消費税(仮称)の創設である。定額保険料よりも年金消費税の方が逆進性は、はるかに少ない。消費税率は現在5%であるが、そのうちの1%分は地方消費税であり地方自治体財源としてヒモつきになっている。年金財源としてヒモつきの消費税(年金消費税)を考えることは決して非現実的ではない。

消費税は国内に居住するかぎり納付する。自動徴収体制はすでに確立されており、支払い拒否はできない。年金消費税としての追加徴収費用はほとんど無視しうる。しかも消費税にはクロヨンがない。国内居住期間のみを受給要件とすれば、国民皆年金がいずれ実現する。

現行の保険システムからの切りかえはどう進めるか。一案として基礎年金財源のすべてを直ちに年金消費税に切りかえる一方、給付は40年かけて段階的に移行する(従来の拠出記録を最大限に尊重する)改革を考えてみよう。消費税として増税が必要となるのは97年度で8.1兆円、税率にして約3.3%である。ただし同額だけ年金保険料負担を減らすことができるので、年金消費税込みの年金負担は全体として変わらない。変わるのは個々人の年金負担である。

 

 

 

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