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学生の加入問題も依然として残っている。もともと20歳以上の学生が交通事故等で障害者になっても国民年金未加入故に障害年金を受給することができないということが問題の発端であった。そうであれば障害年金だけに部分加入させるという選択肢もあったはずである。障害年金分の保険料だけであれば月額1000円前後で足りるだろう。あわせて自動車免許の取得にさいして学生の場合は国民年金の保険料納付(障害年金分のみ)を不可欠の条件とするのである。

その他、税制における生命保険料控除・個人年金保険料控除は公的年金の保険料を納付した人のみに限るという提案もある。

なおサラリーマンの妻で無業の者(いわゆる専業主婦)は国民年金では第3号被保険者と呼ばれている。第3号被保険者としての届出を役所に提出すれば国民年金の保険料を直接納付しなくても年金権が保障される。ところが、この届出を出していない人が今でも100万人前後いるといわれており、無年金となるおそれが強い。紙1枚の届出を提出したか否かで一方は生涯通算で平均1600〜1800万円の基礎年金給付を手にする一方、他方では無年金となる。このような取り扱いも問題が多い。サラリーマンの配偶者(ただし被扶養者のみ)であったことが確認されれば、いつでも過去にさかのぼって第3号被保険者として認定する必要がある。

未加入者の解消や滞納保険料の納付督励には多大な行政費用がかかっている。総理府社会保障制度審議会事務局『社会保障統計年報』によると94年度の国民年金事務費は1817億円、国民年金保険料収入は1兆7296億円であった。徴収や給付に伴う行政費用は保険料収入の10.5%に相当していた。この行政費用には地方自治体が別途負担していた費用は含まれていない。実際には保険料収入の10数%に相当する税金が国民年金制度を管理運営するために投入されていたことになる。

これほどまでに高い行政費用は異常である。ちなみに厚生年金の行政費用は同年度においてわずか0.56%にすぎない。年金行政費用の世界相場は保険料収入の1%前後であり、国民年金の無理がすでに限界に達していることはこの点でも明らかである。これほどまでに高額の行政費用を負担してもドロップアウトが4割近くに達してしまう現状は「政府の失敗」以外の何物でもない。

現に地方自治体は国民年金の事務取扱いに少なからぬ不満を抱いており、97年9月に提出された地方分権推進委員会第二次勧告では国民年金にかかわる市区町村の事務負担を軽減するため未加入・滞納対策は国が直接執行するよう求めている。

なぜ未加入や滞納が国民年金には多いのか。

 

 

 

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