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2]保険主義(事前負担と反対給付の原則)の強化。3]賦課方式の維持。4]積立金を早期に積みますことはしない。1]に関連して、年金制度の枠内では最低所得を保障しない。最低所得は生活保護制度で保障する。

3]に関連して言うと、積立方式の切りかえには10兆マルク(GDPの3.3倍)の資金が追加的に必要となる(いわゆる「二重の負担」)。このような大規模の資金を高利で市場運用できる保証は必ずしもない(むしろ市場金利を引き下げるおそれが強い)。また民営化と規制緩和という今日の流れからみて、このような大規模な資金を政府部門に蓄積することにも問題がある。積立金の使途について政治的介入はさけられず、財政赤字の削減も遅々として進まなくなるだろう。賦課方式を維持することにしたのは、このような理由によっている。なお4]については積立金の早期積み増しが雇用にマイナスの影響を与えるからにほかならない。

改革案の第1の柱は、給付算定式に人口要因を新たに導入することである。平均余命伸長による年金負担増を現役世代と受給世代が等しく分かちあう。これが新しいルールである。1992年65歳時の平均余命を基点とし、性別の違いを考慮しない。ちなみに1983年からの10年間ぞ65歳時平均余命は1.4歳ほど伸長した(1年間で1.7ヶ月分の伸長に相当している)。この傾向は今後とも継続すると見込まれている。

給付算式に人口要因を導入すると、年金保険料(1997年時点で20.3%)は2030年時点において22.9%に抑えることができる(人口要因を導入しない場合には25.9%に達してしまう)。モデル年金額(手取り賃金比)は現在70%であるものの、これが徐々に下がって2030年には64%になる。連邦補助金(国庫負担)も2030年時点で853億マルクが754億マルクに抑えられる。

長生きができるようになったことは本来、喜ぶべきことである。ただし、それに伴う年金負担増をすべて現役世代に押しつけることは今日もはや妥当だとはいえない。OBのすべてが経済的弱者では必ずしもないからである。現役組とOBは一つの財布を分けあっていくしかないのである。若者が負担増を受けいれるからには、お年寄りも給付について多少の遠慮をする。負担増は若者もお年寄りも等分に分かちあう。それが公平というものではないか。1997年1月の新提案における基本的考え方はこのようなものである。

なお平均余命の伸長に対して支給開始年齢をさらに引き上げるという対応も考えられるが、近い将来についてはその必要性を認めない。これが年金改革委員会の結論である。

改革案の第2の柱は、税を財源とする家族ファンドを年金制度の枠内に設け、育児手当財源および育児期間保険料相当分の財源にあてることである。なお子供の数で年金保険料に差を設けることは1997年1月提案では見送られた。改革の基本原則1]2]に反すると考えられたからである。子供の養育にかかわる私的負担の軽減は税を財源とした制度で対応するのが筋だという考え方である。

 

 

 

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