5]強制貯蓄の制度化
既述のように2%の保険料は完全積立となる。現行制度は資金ショートに陥らない程度にバッファーストックをもつだけであった。完全積立分は民間の年金保険スキームヘの加入を原則とする模様である。なぜ完全積立としたか。それはスウェーデン経済が貯蓄不足に苦悩しており、投資のための財源調達がむずかしいからである。将来の日本はともかく、貯蓄超過となっている現在の日本には参考とならない。
6]国庫負担率の引き下げと給付課税の強化
現在、スウェーデンの国庫負担は年金総費用(定額年金+所得比例年金+部分年金)の20%前後である。制度改革により国庫負担は徐々に減っていく可能性がある。国庫負担は最低保障年金(差額分)や育児・兵役期間分の費用に充当される。国庫負担は特別の理由のある事項だけに限定する。これがスウェーデン流の考え方にほかならない。国民すべてに一律に国庫負担をつける日本とは随分と違う発想法である。
なお年金給付はこれまで定額部分(1階)が非課税、所得比例部分(2階)が課税となっていたが、今後はすべて課税所得扱いになる。
7]年金総費用の抑制
年金給付費は現在すでに賃金総額の30%に達している。改革により、その割合は2010年には27.6%まで下がると予測されている。年金受給者は増大するものの、総費用はむしろ相対的に減少する。これが、今回の改革によって期待されている財源節約分である。
当然のことながら1人ひとりの給付額は実質的に切り下げられる。現在の経済状況ではこの切り下げも仕方がない、というのがスウェーデン国民の考え方である。なお40年加入のモデル年金の場合、現行のリプレースメント・レート(給付率)は58%となっている。これが2010年には53%まで下がる。
8]血育児と年金、その他
4歳までの育児期間については育児に専念しても同居を条件に両親のいずれか1人に対して年金権を保障することになった。この間に休職・離職した場合、本人の前年賃金(100%)ないし全被保険者平均賃金の75%に相当する賃金収入があったものとみなして年金クレジットが与えられる。