スウェーデンの新制度では保険料は賃金の18.5%に定められ、将来にわたって不変である。このうち16.5%は賦課方式で運営され、積立金とならない。ただし各人の拠出額は個人別の年金勘定に記録され、それには「みなし運用利回り」がつく。みなし運用利回りは賃金の上昇率(名目値、税込み)に等しい。残りの2%は積立方式で運営され、積立金は市場で実際に運用される。その運用成果も個人年金勘定に記録され、自分の年金クレジット(それまでの保険料拠出累計額、運用利回り込み、みなし運用利回りつき)が毎年いくらになっているかを知らされる注3半、4)。
なお新制度は一見「積立方式の年金」にみえるが、これは誤解である。年金制度の基本線は依然として「世代と世代の助けあい」にある。
年金の受給開始は61歳以上70歳までの間のいつでもよい。平均余命に応じて、それぞれ年々の年金額が決まることになる。平均余命が伸びれば年々の給付額はその分だけ少なくなる。
掛金建てに切りかえ、給付を所得比例の1本にすれば拠出と給付の結びつきはストレートになる。制度改革の第1のねらいはこの点にある。
ただし、この点において例外をいっさい認めないというわけではない。ちなみに次のような規定が設けられている。
1)年金額には最低保障額がある。拠出分がそれに満たないときは全額国庫負担で、その差分をうめる。
2)公的年令対象の賃金には上限がある。上限を超える賃金部分に対する事業主負担分(青天井)は給付にはいっさい反映されない。
3)育児・兵役期間は保険料拠出がないものの、あたかも拠出したかのようにみなして給付を計算する。そのための財源は国庫が負担する。
4)2%保険料拠出分(プレミアム・リザーブ分)に男女差を設けない(平均余命には男女間で違いがある)。
2]公的年金保険料の引き上げは今後いっさい考えない
この点はすでに説明したので、ここでは繰り返さない。欧米ではすでに社会保険料の引き上げは事実上不可能に近い。その引き上げは企業経営をさらに圧迫し、成長のための「金のタマゴ」を台無しにしてしまうという意識が強いからである。スウェーデンの人間高齢化は21世紀になるとさらに進むと見込まれているが、年金保険料の引き上げは予定していない。
なおスウェーデンでは、かつて保険料は全額事業主負担であった。これが将来、徐々に労使折半に変わる。事業主負担分を減らせば、賃上げの余地が生じる。賃上げ分を本人負担分にまわせば被用者本人の手取り賃金に変わりはない。ちなみに医療保険では1992年に本人1%負担を導入し、1995年時点には本人負担が2.95%になっている。年金保険料も1995年から本人負担1%が導入されている。