2. 節約の必要性の合意
幾つかの世論調査によれば、多くの者は基本的には国の財政抑制政策は妥当だと思っている。年金受給者の代表者でさえも、現行の社会システムのもとで、保険料率が今後増加すれば、税制等の算定の基盤が崩れてしまうことを恐れている。不況による労働者の賃金切り下げやブラックマーケットの広がり、経済や社会環境が悪化すれば、極端な場合には国籍移転まで考えられるからである。
図表9はドイツの国民性がうかがえる高齢者の性格タイプで、四つの典型的タイプに分けられているがそれを見ると、大多数が自主的で社会の出来事に無関心ではないと思われる。
3. 既得権利の悪用
社会保障給付が提供され、社会的困窮者に対する対策も全般的に整っているドイツは、この水準に達していない国々とくにドイツに流入してきた人々の目から見れば、かなり理想的と思われているに違いない。しかし、経験が示すように、社会給付が一応の「水準」に達してしまうと、「あたりまえ」になってしまい、働いてそれを享受すべきことが忘れられ、ときにはただ乗りの者にも給付されることが起きてしまうこともある。特に労働機会が得にくい状況になれば、努力して労働を提供するより、安易に社会制度を利用する方向に流されてしまう者もあろう。
また、社会保障給付における既得権利の悪用者は個人だけとは限らない。事業体や社会的グループにも社会保障システムを利用し、儲けることすら行ってしまう者も現れる。よく問題になるのは医師、病院、薬剤会社であるが、近頃は在宅介護サービス機関なども糾弾されている。さらに、社会保険料等の負担に悩む企業も、労働者を早期退職させることで負担を回避しようとする者も少なくない。(ちなみに、ドイツでは保険料は労使折半であるが、図表10が示すように、ヨーロッパ各国でまちまちである。)
4. 社会保障制度への疑問
社会保障システムが問題を生むようになってきたのは、個々人が蓄積した成果が将来自分のために給付される応能応益ではなく、他人のため、とくに高齢者の扶養負担が極めて大きくなってきたことである。高齢者の扶養については、ドイツでは「世代