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第2章 デンマークの社会保障制度

 

2.1 高負担高福祉と公的サービスヘの満足度

 

デンマークの社会保障制度は日本では高負担高福祉と呼ばれているグループに属す。日本では、高負担の使われ先を福祉を含める社会保障制度との関係だけで論じられることが殆どだが、デンマークにおける高負担は社会保障の面だけでなく、義務教育から、職能教育や高等教育に至るまでの教育、研究、文化、環境対策など幅広く公的セクターの運営に使われている。国内総生産に対する公的支出は54%で、スウェーデンの62%に次いで世界第二の高さである。しかし公的支出は、北欧諸国だけではなくフランス54%、ベルギー51%、イタリア51%、オーストラリア51%、オランダ49%、ドイツ49%とヨーロッパ全体に広がっている。ちなみに日本は35%でOECD諸国の中では最も低いグループに属するから、デンマークとは対照的といえる。他に公的支出の低い国は、アイルランド36%、オーストラリア36%、ギリシャ33%、米国32%、韓国22%である。(資料はいずれもOECD、1997年度の数値)

デンマークの大蔵省は定期的に負担の対価である公的サービスの満足度と、国民の租税負担感の調査をしている。最も新しいものは1998年10月に公表された。それによると1995年に行われた前回の調査よりもサービスへの満足感は向上し、租税負担感も少なくなっている。1995年のOECDのデータでは、国内総生産に占める直接税、間接税など租税全体(日本を含め国によっては公的社会保険料を含む)の割合は54%で世界一の高率である。ちなみに、スウェーデンは51%、スイスは47%、ドイツは45%、カナダは37%、米国は31%、日本は29%であった。またデンマークの消費税は25%でスウェーデンと並んで世界一高い。なお、ヨーロッパ諸国の消費税率は概して高く、最低でも15%である。

これほど税金を支払っているデンマークの国民は、税率についてどのように感じているのだろうか?。表3-1で分かるように、約半数の49%がちょうど良いと答えている。もっと高くても良いの7%を加えると、56%が税率に満足していることが分かる。つまり世界的に見て最も高い税率を、過半数のデンマーク人は高いとは考えていないわけで、こうしたことが可能なのは、後述するような高齢者福祉サービスを含めて税の負担に対する対価としての公的サービスに多くの国民が満足しているからに他ならない。

表3-2では、低負担で低公的サービスか、今のレベルのままでよいのか、それともさらに高負担になってもより高度な公的サービスを求めるのかという、国民の負担

 

 

 

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