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多くの国では高齢化と少子化が同時進行してその対応策に悩んでいるが、デンマークでは、一時的とはいえ高齢化のスピードが減速し、出生率も上がってきている。デンマークの合計特殊出生率は1983年に1.38にまで落ちたが、これで底を打ち、以来ずっと上昇してきている(図3)。何故一度落ちた出生率が再び堅調な上昇に至ったのか、それを十分説明できる定説はない。児童手当や育児休暇制度などの導入も影響があるかもしれないが、保育制度を含む福祉制度の充実一般が安心して子供を育てる環境づくりになっていることは考えられる。
さらに、高等教育の教育費も租税方式で無料であり、さらに親の所得に関係なく18歳以上で教育を受ける場合、月当たり7万円ほどの奨学金が生活支援金として国から直接子供に支払われることもあり、子供に対する教育費の負担がないことも影響しているかもしれない。つまり親にとって育児と仕事は両立することができ、財政的にも余り負担になることがないわけである。こうしたことは、中長期的視点からすれば子供を産みやすくしている条件を提供していると言えるだろう。

65歳以上の高齢者は現在相対的に減少しているが、この数字では見えない高齢者問題がこの裏には隠れている。つまり、後期高齢者が増え続けているのである(図4,5)。医療、福祉資源の利用度が高い後期高齢者が増え続ければ当然のこととして医療、福祉サービス制度を圧迫する。財政措置でレベル維持を図るか、それが不可能ならレベル低下が不可避になる。デンマークではこうした動かしがたい現実を前に、どのように対処すべきかが政治経済的な課題として重要になってきてる。その点は、先進国共通の問題であると言えるだろう。

 

 

 

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