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図5 デンマークの85歳以上の占める割合(%)

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1.2 後期高齢者の増加と医療制度の利用度

 

高齢社会では、不可避的に年金、医療、福祉の財源が膨張する。生活水準の向上や医療技術の発展、さらに医療サービスが利用しやすくなるにしたがって高齢者の相対的利用度が上がるのは先進国共通の現象である。

デンマークにおいても、高齢者の医療利用率は他の年齢層よりもはるかに高い。循環器、消化器をはじめ脳神経や骨折などでの罹患率が高くなるばかりでなく、合併症になりやすいことなどが原因である。そうしたことから、かかりつけ医師である家庭医による一次医療(プライマリケア)が非常に充実しているデンマークでさえも、入院せざるを得ないケースが高齢になるほど急速に増加する(図6,図7)。しかも入院費用が完全無料なデンマークの医療制度では、医学的に入院が必要とされれば容易に入院できて、必要な治療が行われるから、高齢者増加は、構造的に医療制度を圧迫することになる。

さらに高齢者の場合は、入院期間が他の年齢層に比べて長くなるから、この点でも医療費の高騰に影響を与える。年齢とともに平均入院日数が伸びており、85歳以上では45〜54歳の年齢層の2倍ほどにも上っている(図8)。ということは、後期高齢者が増加することは全体の平均入院日数を延ばすことになるが、デンマークでは全体の平均入院日数が1980年の9.4日から1995年の6日と逆に15年間で3.4日短縮している。この数値は世界で最も短い国のグループに属する(図9)。病院数(精神病院は除く)もまた1980年から1995年までの15年間で、は116から82へ、また病床数は32,269床から23,603床へといずれも3割ほど減少している。それにもかかわらず、退院者数は逆に91万人から109万人と18万人とに増えている。9000床も少ないベッド数でより多く

 

 

 

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