(所得税の税率低下、課税対象領域の拡大、付加価値税/消費税ならびに資産課税の強化)、資本の国際的移動に対する為替規制の自由化、市場競争促進のための規制緩和(タクシー営業、建築、農業、民間航空、電力、電信電話など)などであった。
また、公的支出の抑制対策として、社会保険制度の構造的改革が一部実施され、傷病賃金(傷病休暇時の所得保障で、最初の2週間は雇用主が支払うため傷病賃金と呼ばれる)や待機日が導入された。
91-93年の深刻な不景気の後、スウェーデン経済は著しく回復に向かい、GNPは95年に3.9%を達成している。主な要因としては、輸出の増大が挙げられ、クローネの価値が下がったこともあり、スウェーデン企業が競争力を回復している。しかし、雇用の拡大は公共部門の雇用縮小を補うほど十分ではなく、高失業率の継続と弱い公共財政が人々の消費を押さえていることが予想される。反面、これらの要因は貿易収支を黒字にしており、97年ではGNPの3%近くに相当するにいたっている。
総計118兆クローネ(GDPの7.5%)の節約および歳入の強化を目的として行なわれた財政建直しは成功し、90年代初期の財政危機は一応解消したといえる。国の財政赤字は大幅に是正され、負債も減少した(図8)。
95年、スウェーデンがEUに加盟したことによって、スウェーデン経済が転換期にあることを示唆する人も多い。確かに、インフレーション対策を重視するマクロ経済を主流に据えるようになった点では、スウェーデン経済のヨーロッパ化が指摘される。EUにおける共通貨幣EMUへの最初からの参加はスウェーデンは見送ったが、参加すればヨーロッパ化はさらに進むことが予想される。今回の深刻な経済危機はマクロ経済的な要因とスウェーデン経済の構造的問題の両方によるものであるとしても、一連の構造改革が果たして一時的なものにとどまるのか、スウェーデン経済の永久的な方向転換を意味するのか、予想することは難しい。