3]施設の種類が煩わしく・機能が重複している
我が国では、福祉と医療衛生のシステムのもとに「長期照護機構」(長期介護施設)、「養護施設」(特別養護老人ホーム)、「慢性病床」(慢性病棟)、「護理之家」(ナーシングホーム)など4種類の施設サービスがある。行政側は機能障害程度と技術的サービスのニーズに踏まえて、これら4種類の施設の受け入れとサービス範囲を区分しようと試みたが、残念ながらできなかった。つまり理論的にはこれを区分することができなかったのである。長期介護の対象は慢性病症による機能障害者であり、医療と介護サービスの2つのニーズを持っている。
また、施設に入所している高齢者は機能障害が比較的重度のほうなので、技術的な介護ニーズを必要としている。要するに高齢者は医療あるいは技術的介護ニーズを持っているから、施設の階層を区別することができない。それに、高齢者は入所後、身体状態の変化によってサービスの技術的な階層も変化しているから、施設の階層をわざわざ区別させるのは実情に即さない。このことによって、かえって施設の運営と管理を混乱させるだけでなく、高齢者にとっても完備された長期介護を連続的に利用することができなくなる。
上述の欠点を改善するため、複合型長期介護施設を設立する、施設の階層を単純化する、各種類の施設の管理機関を一つに統合することなどによって、施設を同じ枠に入れて運営と管理が一元化でき、階層が多すぎることによってサービスがバラバラになる恐れを避けることができる。
4]施設に偏重し、コミュニティ対策を見落としている
正式的な長期介護サービスの提供を増やすため、最近内政部は養護用ベッドを特別養護用ベッドに変更し、衛生署は病院のナーシングホームの増設を奨励し、公立病院のべッドを長期介護用に変更した。また「栄誉国民病院」(1945年国民党政府と一緒に中国大陸から台湾に移った退役軍人のための専用病院)のベッドを社会に開放するような対応策を出した。これによって我が国の長期介護サービスが短期間内で大幅に成長することが予測できよう。
しかし一方、コミュニティケアの促進についてまだとどまっている現状である。このような方向性は介護資源が施設のほうに固まり、正式なサービス援助を必要とする高齢者にとって、選択の余地がなく、施設に入所しかできなくなり、かえって将来介護制度は高度施設化に向かって進んでいくと思われる。しかし、国民のコミュニティ介護サービスに対する好感と、これからの高齢者の教育水準と経済成長の趨勢を踏まえると、コミュニティを見落とす政策は国民のニーズに反し、時代遅れといえよう。