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に利用していない者の割合が大きかった。この結果からも、転入者の福祉サービスへのアクセスの阻害が観察された。つまり、移動前に在宅福祉サービスを利用していた者の半数近くが移動後には利用できず、移動前に入所していた者の4分の1しか引き続き入所できない状況にあることが示された。また転出者に関しては、移動前に入所していなかった者が移動後に入所する傾向がみられたが、その反面、移動前に入所していた者の約4割は移動後に福祉サービスを利用していない状態にあり、居住移動による福祉サービスへのアクセスの阻害は転出者にも存在していることが示された。

表2-18に、移動前と移動後の福祉サービス利用について「なし」を0点、「あり」を1点として、移動前後の間の順位相関係数を者別に示した。これは移動前後で福祉サービスの利用状況が変化していないか、つまり移動前に利用していた者は移動後にも利用しているか、あるいは移動前に利用していなかった者は移動後にも利用していないか、の程度を表す指標である。福祉サービス(入所と在宅福祉を含む)の利用、入所サービスの利用ともに、転出者、転入者は市内転居者と比較して'順位相関係数が低く、福祉サービス利用の状況が移動前後で変化していることが示された。この結果は、表2-17の結果と同様に、他の自治体への居住移動が福祉サービスへのアクセスを阻害する要因となっていることを示唆している。特に転入者は特に順位相関係数が低いことから、他の自治体から居住移動した者に対して、速やかにニーズのアセスメントを実施し、ニーズに適合した福祉サービスを供給できるようなシステムを確立する必要があると考えられる。

 

表2-18 移動前と移動後の福祉サービス利用の間の順位相関係数

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7. 社会活動

 

老研式活動能力指標や介助の必要度の結果から、居住移動している高齢者の多くは比較的健康で自立した生活を送っていることが示されている。したがって移動高齢者の健康状態を、病気であるかどうか、寝たきりであるかどうか、といった消極的な捉え方ではなく、より活動的な生活を送っているかどうか、というより積極的な捉え方によって明らかにする必要がある。ここでは「社会活動」という概念を用いて、移動高齢者がどの程度地域社会に参加あるいは貢献しているかを分析した。

 

 

 

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