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体育科学センター第12回公開講演会講演要旨/幼児の精神的発達と運動

4.幼児の社会性発達と運動
 幼児がその社会の構成員となるための知識,技能,慣習などを習得していく過程を社会化と呼ばれている.
 現代の幼児たちは戸外で友だちと一緒に活発に遊ぶことが少なくなり,仲間づくりは進まず,むしろ分断されたまま,室内の静的遊びにこもりがちとなっている.このことは,幼児の社会化にとってきわめて危機的な状況を生み出しているといえる.
 本来,幼児は基本的な社会関係の在り方について,これを遊びを通して理解していた.遊び道具を1人占めしたがったり,いつも良い役につこうとする我がままな子がいると,遊びは簡単に成立しないし,無理に始めてもすぐに喧嘩分れしてしまうことになる.遊びは平等の条件で,役割は分担して,自分がして欲しいように友だちにもしてあげて(他人の尊重),遊びを一層面白くして(競争と協力),同じ規準のもとに遊ぶ(ルール)ことなど,社会的適応行動の基礎が学習されねばならない.
 それらが適切に行われなくなった弊害は,今や大学生にまで及んでいる.
 幼児期に体力や運動能力が優れていると,よく遊ぶ.その結果,一層よく遊びを知り,よくこなすところがら,友だちがたくさん集まってくるし,集まったものの中ではリーダー格になることが多く,リーダーとして得た自信と優越感から情緒は安定し,弟妹の面倒見もよいという例が多い.


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