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体育科学センター第11回公開講演会講演要旨/運動中の事故死について


 1.運動中の事故死の実態
 新聞などでしばしば運動中の事故死が報ぜられているがその実態は必らずしも明らかでない.特にその原因が何であるかについては不明の点が多い.1つには死亡例の解剖が少いことによる.東京,大阪では監察医務院があり,運動中の急死例を解剖する機会が多いが,地方では解剖されないまま病死として診断書が出されてしまうことが多い.事故の原因を解明し,今後の対策をたてるためにも解剖される様,遺族および関係者の理解を求めなければならない.
 事故例については学童および高校生に関しては日本学校安全会がまとめたもの1,2)があり事例に関して詳しい報告があるが,成人に関しては十分な統計がない.日本体育協会スポーツ科学委員会の運動時の事故防止に関する研究班が行った調査3)を表1に示した.これは全国47都道府県体育施設1,120より集められたものであるが,施設利用者数は延べ人数であるが年間約6,000万人にも達している.過去8年間に急死事故の経験ありとした施設が33(3%)あった.外傷による事故死は除いて内因性の急死は31件あった.1年平均にすると約4人であるが,これは体育施設利用者といういわば氷山の一角ともいうべきもので,道路上のジョギング,マラソン大会などを含めればさらに多くの数字となろう.


表1 スポーツ時の急死に関する全国調査



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