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高齢者の歩行能力に関する体力的・動作学的研究(第2報)
−膝伸展,足底屈,足背屈の筋力と歩行能力の関係−

 先にも述べたように,今年度は体カテストの測定項目から呼気中亜酸化窒素濃度は削除し,ファンクショナルリーチ(Functional reach:FR)と握力(Grip strength)を加えた.まずファンクショナルリーチに関して,Duncanら2,3)は同一個人に対しファンクショナルリーチを測定したが,変動係数は小さく(CV=2.5%),日を変えて測定しても安定した結果(r=0.81)が得られることからバランス能力の指標として有用であると述べている.本実験では2年(平成9年と平成10年)連続して体力測定に参加した男性のファンクショナルリーチの平均値(±SD)は,27.0(5.4)cm,女性のそれは25.2(3.7)cmであった.先のDuncanら2,3)は41-69歳および70-87歳の男女のファンクショナルリーチを測定し,男性の平均値(±SD)は,それぞれ38.0(5.5)cmと33.4(3.9)cm,女性のそれは35.0(5.5)cmと26.5(8.9)cmという値を報告している.Duncanら2,3)の報告値と比べ本実験で得られた値はかなり低い.この理由としては,Duncanらはファンクショナルリーチは年齢と身長に影響されると述べていることから,身長差(約6cm)によるものであろうと考えられる.
 一方,25名の男性の左右握力の平均値(±SD)は,37.4(5.6)kgと35.5(6.2)kgであり,21名の女性の左右握力の平均値(±SD)は,25.3(4.1)kgと24.5(5.0)kgであった.これらの値と木村らの結果を比較すると,先の長座体前屈,開眼片足立ち,閉眼片足立ちと同様本実験で得られた値の方が大きい.木村ら6)の被検者は,65歳以上が参加資格である「すこやか講座」において,立っていても,座っていても,寝ていてもできる“すこやか体操”を中心としてレクリエーション的な運動であり,ジョギングといった持久的運動を定期的に継続実施している者が皆無であったという.これに対し本実験に参加した多くの高齢者はアンケート調査(後述)の中で,日常生活においてからだをよく使うように努力していると答えていることから,日常生活における運動量の違いが関係する可能性も考えられる.これらの点に関しては今後の検討課題の一つかもしれない.
 今(平成10)年度も各被検者に対し単純反応時間と全身反応時間をそれぞれ3回測定した.今年(平成10年)度の単純反応時間,特に全身反応時間2回目の平均値は,男女とも昨年(平成9年)度のそれと比較して有意に低値を示した.また全体(46名)でも単純反応時間,全身反応時間は有意に短縮している.これらの結果は,被検者が測定に慣れてきたためかもしれないが,現時点では反応時間短縮の理由については明らかでない.


Table 1-2. Results of physical fitness test in females



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