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中高年女性の水泳運動中の酸素摂取量に関する事例研究

 まとめ
 本研究の目的は,中高年女性を対象に水泳中の酸素摂取量を測定することであった.43歳から70歳の10名の女性を,床面をランプが移動し,泳者の泳速を示すペースメーカーの設置されたプールで50メートルを泳がせ,その終了前の約30秒の呼気を採取し酸素摂取量を測定した.泳速は被検者の泳力に合わせ,疲労困慮まで増加させた.各泳速度での50m泳の間には20秒の休息を挟んだ.
 全被検者の水泳運動中の酸素摂取量は27.6±7.2ml/kg/minであり,トレッドミルによる歩行あるいは走行時に得られた最高酸素摂取量(32.2±6.4ml/kg/min)に比べて有意に低く,水泳中に得られた酸素摂取量の最高値はトレッドミル運動中に得られた最高酸素摂取量の85±9%であった.これらの被検者のうち,水泳歴の長いコーチ1名は水泳中における酸素摂取量の最高値は走行運動中の最高酸素摂取量より高い値であった.一方,最も泳力の低い被検者では,水泳中の最高酸素摂取量はトレッドミル運動で得られた最高酸素摂取量よりかなり低かった.本研究の結果より70歳を含む中高年スイマーでも水泳運動中の酸素摂取量の測定が可能なことが明らかになった.今回行った方法では,水泳運動における最大酸素摂取量が測定されたかは疑問な点が多いが,今後,より良い測定機器が開発されれば,水泳トレーニングの効果判定として,水泳中の最大酸素摂取量の測定が可能になることが期待される.

 文  献
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