中高年女性の水泳運動中の酸素摂取量に関する事例研究
2.トレッドミルによる最高酸素摂取量の測定
トレッドミルを用いて,乳酸性作業閾値(LT)および最高酸素摂取量の測定を行った.測定は,前日,十分睡眠をとった被検者を対象とし,まず5分間の立位安静後に,安静立位における呼気ガスを採取した.その後,被検者に角度0度のトレッドミル上を1分間60mの速度で4分間,歩行させた.その後は,トレッドミルの角度を0度に保ったまま4分ごとに10m/分ずつ120m/分まで速度を漸増させた.次に,トレッドミル速度120m/分に保ったまま,トレッドミルの角度を3度に上昇させ,被検者に走行するように指示した.その後は,やはりトレッドミルの速度を120m/分に保ったまま,トレッドミルの角度を3分ごとに1.5度ずつ上昇させることにより運動強度を漸増させた.検者の判断で,より速い走行が可能と思われた被検者には,走行速度を140m/分まで増加させた.
運動の終了は,被検者がこれ以上歩行あるいは走行できないと申告したときとした.本研究で対象とした被検者で関節等の痛みで運動を停止した事例はなかった.
各負荷段階の終了2分前あるいは1分前から採気を行い,酸素摂取量を測定した.採気はダグラスバッグ法で行い,呼気中の酸素および二酸化炭素濃度をミナト社製のガス分析器で測定した.呼気量は品川製作所製のガスメーターで定量した.運動時に観察された酸素摂取量の最高値を最高酸素摂取量(Peakoxygenuptake)とした.各負荷の終了直前に指尖から採血し,YS1社製のYSHs00SportL一ラクテート・アナライザーで血中乳酸濃度を測定した.
3.水泳運動中の酸素摂取量の測定
鹿児島県鹿屋市にある鹿屋体育大学実験プールにおいて水泳中の酸素摂取量を測定した.同実験プールに設置してあるペースメーカー付きの水泳レーンで測定を行った.この場合は,水泳レーンの床に設置してあるコンピュータ制御ペースメーカー(一定速度で液晶が移動する)を用いた.被検者はそのペースに従い,25メートルプールを往復(50m)し,その最後の20秒から30秒の呼気を採取し,酸素摂取量を1分当たりで算出した.各速度での50m泳の間の休息時間は20秒程度であった.被検者が“これ以上の速度で泳ぐことが不可能"と申告するまでペースメーカーの速度を漸増させた.被検者の呼気の採取は,水泳運動中に呼気が採取できるようオランダで開発されたシュノーケル式のマウスピースを用いた.しかし,このマウスピースを用いても全ての被検者の水泳中の呼気を集めることはできなかった.実際に,水泳実験を行った被検者は12名であったが2名はどうしても,マウスピースを用いて50m泳ぐことができず,測定を断念せざるを得なかった.採気はダグラスバッグを用いて採集した.呼気中の酸素および二酸化炭素濃度は,Oxycon4(Mijn-hardt社(オランダ)製)に搭載されたガス分析器で測定した.呼気量は品川製作所製のガスメーターで定量した.
4.体脂肪率
体脂肪率は,肩甲骨下縁と上腕背部の皮脂厚を栄研式キャリバーで測定し,身体密度を推定し9),ブロゼックの式2)より体脂肪率を求めた.
5.統計方法
群間の平均値の差を対応のあるt-testで評価し,危険率5%以下を有意とした.
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