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中・高年齢女性のライフスタイルと生き甲斐および体力 −独居者と家族同居者との比較−


 まとめ
 本研究は,都内に在住する51〜75歳の女性214名を対象に中・高年齢者の平衡機能等の体力と習慣的に実施する運動(Ex,Nex),仕事の有無等ライフスタイル,生き甲斐,精神的ストレス,生活目標の有無等を調べた.そして独居者(I群)と家族同居者(II群)で比較し,転倒,骨折による寝たきりにならないための平衡機能等の体力とライフスタイル等について,とくに自立した中・高年齢者の生活,および体力的背景を調べることを目的とした.
 結果は以下のとおりである.
 1.I-Exは,I-NexおよびII-Exに比較し平衡機能に優れ,棒つかみ反応も速かった.
 2.I-Ex群は,運動を生き甲斐の対象にし,運動による健康,体力の維持とともにII群の者よりも生活に対する強い動機の存在が示された.
 3.定職に就く者は,定職に就いていない者より平衡機能に優れ,生き甲斐を感じている者が多かった.運動実施の有無,飲酒,喫煙習慣には,仕事のある群とない群およびI群とII群の間に差はなかった.
 以上の結果から,運動を生き甲斐として行う中・高年齢女性は,独居者ではとくに「健康でないと生活していけない」という気持ちの上にライフスタイルが成り立ち,日常行う運動によって平衡機能と敏捷性が向上・維持される可能性が高く,結果的に転倒しにくいライフスタイルであるように思われた.

 (なお本稿の結果の一部を,平成10年第53回日本体力医学会大会にて口頭発表した.)

 文  献

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