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高齢者における継続的な運動・スポーツが体力および情緒・行動面に及ぼす影響
−運動クラブに所属する高齢者の4年後の追跡調査−



 高齢化社会の中で,高齢者自身が主体性を持ち,健康的で豊かな生き甲斐のある生活を送るにはどうしたらよいのかという生活の質(QualityofLife:QOL)を追求することが重要な課題となっている.このため,高齢者においても健康づくりや生涯学習の推進など,様々な取り組みが各地で積極的にすすめられている.その中で,高齢者における運動・スポーツ活動には,体力の低下を抑制させる効果に加え,高齢者のQOLを多方面から向上させる観点で大きな期待が寄せられる1).
 我々は,高齢者の望ましい生活様式の確立と積極的な健康づくりを検討するために,高齢者の体力や運動習慣に着目した調査・研究を継続している.すでに,地域に在住する一般高齢者の体力や運動習慣の実態を明らかにする3-7)とともに,日常生活での軽い運動習慣が高齢期での体力の加齢変化を抑える5)ことなどを報告してきた.また,京都市における高齢者向けのスポーツ教室やスポーツクラブ参加者の調査14-16)では,このような高齢者の特徴として,過去に特別な運動・スポーツを経験している者は少なく,ほぼ全員が初心者として各スポーツを始めているが,体力は一般高齢者の平均よりやや高いレベルを有していることや,教室やクラブ活動に参加することにより,行動範囲が拡大し,健康感が高まり,情緒的にも安定することなどが示され,高齢期での運動・スポーツ活動は,高齢者のQOLによい影響を及ぼしていることを認めてきた.
 一方,健康的な生活には,これらの運動・スポーツを生涯にわたり継続的に実践することが重要な課題となる.そのためには,高齢者自身の体力の維持,個々にフィットした種目の選択やよい人間関係の維持,さらに運動・スポーツ効果の評価等が必要不可欠な要素であると推察される.しかしながら,高齢者における運動・スポーツの歴史はまだ浅く,高齢期になって運動・スポーツを始めることが,あるいはそれを継続することが高齢者の生活や身体面,精神面にどのような影響をもたらすのか,また,高齢者が運動・スポーツを継続できない要因は何か等,高齢者を対象とした運動・スポーツの「継続性」に関する研究はあまりないのが現状である.
 そこで,本研究では,高齢者における継続的な運動・スポーツの影響を体力および情緒面,生活面から評価することを目的に,平成6年に調査した運動クラブ所属者を対象として平成10年に追跡調査を行い,両年ともに協力の得られた高齢者について,4年後の実態について検討した.



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