体力レベルの高い中高年齢女性における椅子からの立ち上がり動作特性
2.立ち上がり動作の解析
椅子からの立ち上がり動作は開始肢位である椅座位での頭頂の移動開始から,最終肢位である立位での頭頂の移動停止までとした.動作に関する指示として,前方を注視することを課し,上肢で下肢を押すことを禁じた以外は,足部の位置および動作速度を含めて各被検者に任意の立ち上がり動作とし,被検者が動作を円滑かつ容易に遂行できるよう配慮した.
被検者には,頭頂・顎・肩峰・肘頭・手首・大転子・大腿骨外側顯・外果・第5中足骨骨頭の9カ所に反射テープを取りつけ,右側方からビデオカメラ(毎秒60フレーム)で撮影した.立ち上がり動作に用いた椅子の高さは,米田ほか16)に依拠し,被検者の脛骨上端から足底までの長さを基準として,その50%,75%,100%,125%の4条件に設定した.試行順は各被検者で任意とし,各条件の高さで練習2回,本試行1回を行った.
記録したビデオテープからパソコンヘのサンプリング終了後,電機計測販売株式会社製動作解析ソフトFrame-DIASを用いてデジタイズおよび解析を行った.立ち上がり動作時の関節角度変化として今回解析したのは,臼田と山路14)に従い,1)体幹前傾角度(肩峰一大転子を結ぶ線と垂線のなす角度),2)股関節屈曲角度(肩峰一大転子と大転子一大腿骨外側顆のなす角度,直立位を0度),3)膝関節屈曲角度(大転子一大腿骨外側顆と大腿骨外側顆-外果のなす角度,最大伸展位を0度)であった.各条件の高さでの立ち上がり動作時にみられる最大値を分析の対象とした.
3.統計処理
各測定値は平均±1標準偏差で示した.椅子の高さの条件の違いによる立ち上がり動作時の各関節角度変化については分散分析を用いて検討し,さらに50%,75%,125%の各条件での値と100%の条件での値との平均値の差の検定には対のt一検定を用い,統計的には5%水準以上をもって有意とした.
研究結果
1.動作時間
各条件での動作開始から終了までの立ち上がり動作時間を表2に示した.100%の高さでの動作時間は1.13±0.08秒(平均±1標準偏差)であったが,これに対してより低い椅子での試行である50%・75%条件においては動作時間が有意に延長し(各々,1.50±0.09秒,p<0.01と,1.31±0.11秒,p<0.05),より高い椅子での試行である125%条件では統計的に有意ではないが短縮する傾向にあった(1.02±0.15秒).
Table 2. Time required for rising from a chair of various heights
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