日本財団 図書館


中学校女子バレーボール部の部活動における運動量が体力に与える影響


 至適な体力水準を維持・増強していくためには,年齢を問わず何らかの運動を継続していく必要がある.中学生にとっての運動の機会は,体育の授業以外では,従来から各学校で行われている運動部活動が最も一般的である.しかし,運動部活動において,どの程度の強度でどの程度の量の運動を行っているのかということについては,未だに把握できていない部分が多く残されている.
 筆者たち14)は,中学校サッカー部員を対象として運動量と体力の関係を検討したところ,同じ内容の練習を行っていても運動量には大きな個人差があり,運動量が多いものほど体力水準が高い傾向にあることがわかった.さらに,サッカーの技能水準が高いものは運動量が多い傾向にあり,とくにゲーム形式の練習において顕著であるという結果も得られた.これは,パスを受けるために敵のいない所へ移動できるかどうかということが如実に現れた結果と考えられた.
 本研究では,対象を女子に変え,運動量と体力の関係を検討することを目的とした.種目は,女子運動部の中では以前から人気が高い競技の1つと考えられるバレーボールを選択した.

 研究方法
 1.被検者
 本研究の被検者は,東京都千代田区にある私立K中学校バレーボール部の女子生徒(全35名)のうち,本研究への参加同意書が得られた16名(1年生10名,2年生2名,3年生4名)であった.練習の頻度は週4日で,1回の練習はおよそ3時間であった.全ての測定を夏季休業中に行った関係で,練習時間は通常の授業期間中よりも長かった(通常は1時間程度).K中学校は,本研究の測定期間中に行われた私学大会において1回戦敗退であった.

 2.測定
 1)形態測定および体力測定
 形態については身長,体重および皮下脂肪厚(上腕背部および肩甲骨下部)を測定した.体力については,握力,背筋力,脚伸展力,垂直跳,全身反応時間,無酸素性能力および有酸素性能力を測定した.握力および脚伸展力については,左右の平均値を結果に示した.皮下脂肪厚は上腕背部と肩甲骨下部の合計を示した.
 握力および背筋力は体力診断テストの実施方法に準じて行った.脚伸展力は,膝角度を約100度として椅座位による等尺性最大筋力を測定した.全身反応時間は,光刺激による単純反応時間を測定した.無酸素性能力の測定は往復走の形式により体育館内で測定した.方法は,片道が9mであったこと以外は前報14)と同様であった.有酸素性能力は自転車エルゴメータによる最大下多段階運動負荷テストにより測定した.すなわち,1段階につき4分間の運動を4段階行うものであった.用いた自転車はエアロバイク232C(コンビ社製)で,ペダル回転数は60回転/分,運動強度は20,40,60および80Wとした.これらの結果から,最小二乗法により心拍数と酸素摂取量の直線回帰式を求め,この式に「220-年齢」に相当する心拍数を代入することによって,各被検者の最大酸素摂取量(Vo2max)の推定値を算出した.

 2)部活動中の心拍数の測定
 部活動中の心拍数の変動をハートメモリ(VINE社)およびハートレイトモニタ(ボラール社アキュレックスプラス)を用いて60秒間隔で測定した.心拍数変動の1例を図1に示した.全員が同一の日に測定できなかったので,日によっては練習内容や練習時間が多少異なっていたが,大まかには前半が個人の技術練習で後半がチーム練習(試合形式)という形であった.チーム練習のときには,3年生は全員コートに入っていたが,1,2年生はラインズマンになったり,座位で見学をしていた.部活動中に得られた心拍数から%Vo2maxおよびエネルギー消費量を算出した.

Fig.1. Example of heart rete changes during practice



前ページ    目次へ    次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION