ジュニアユースサッカ選手に対する10ヵ月間のトレーニングの影響
プロサッカーリーグ(以下,Jリーグ)の発足後,オリンピックヘの28年ぶりの出場およびワールドカップ初出場と,わが国のサッカーの発展には目を見張るものがある.今後,さらに世界のトップレベルを目指していくためには,長期的視野に立ちジュニア期からの一貫した指導体制のもとで適切なトレーニングを行い.選手を育成していく必要がある.現在,わが国ではJリーグの下部組織をはじめ,ジュニアからユース年代までの選手育成コースを設けたクラブチームが増加している.しかし,実際の現場で行われているトレーニングが選手にとって適切な内容であるかは疑問視されている3).その背景には,わが国には育成年代のサッカー選手の身体的および機能的特徴をはじめとしたデータの蓄積がほとんどないため,トレーニングがコーチの経験や入手し易い海外からのデータをもとにして行われている傾向がある.
このような情況に対処するために我々は前報2)において,まずJリーグの下部組織に所属するジュニアユースサッカー選手の体力的特徴を横断的調査により明らかにした.次いで本研究では,ジュニアユースサッカー選手を対象にしたクラブで行われているトレーニングが.選手の身体的および体力的特徴にどのような影響を与えているかを明らかにし,トレーニングプログラム作成のための資料を得ることを目的とした,
研究方法
1.被検者
被検者は某Jリーグチームのジュニアユースチームに所属し,測定開始時の平均年齢が12.6歳の男子サッカー選手)11名であった.ポジションはForwarder 3名,Mid-fielder 4名およびDefender4名であった.
研究に先だち,事前に被検者およびその保護者とコーチに対し,口頭と文書にて実験の趣旨,内容および手順を十分に説明して,その内容をこれらの関係者が理解したうえで,選手が測定に参加する事の承諾を得た.
また,被検者に対して,あらかじめ12誘導による安静心電図の測定を行い,心機能に異常の無いことを医師が確認したうえで実験を行った.
2.測定項目
形態的特徴については身長,体重および皮下脂肪厚を測定した.皮下脂肪厚はBモード超音波皮下脂肪厚計(SM-206型:誠鋼社製)を用いて,先の報告2)と同様な方法により測定した.機能的特徴については.等速性脚筋力,脚伸展パワー,30m走と50m走.最大酸素摂取量およびその関連項目を測定した.その測定方法の詳細は前報2)にて述べたとおりである.
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