プロジェクトのねらいとまとめ(青少年体力向上対策専門委員会)
吉田たちの報告について
本報告は,中学校の運動部活動における運動量と部員の体力との関係を明らかにすることを目的としてなされたものである.競技能力が
ごく一般的水準の女子バレーボール部員を,上級群(3年生)と下級群(1・2年生)に分けて形態と機能の比較を行い,また,練習中のエネル
ギー消費量の比較をしている.報告されている結果の要点は次のとおりである.
1.形態的には,上位群の身長と皮下脂肪厚が大きかったが,体重には両群間の差が認められなかった.
2.機能的には,脚伸展力が上級群で大きく,PWC170については上級群の方が大きな値を示した.握力,背筋力,往復走,全身反応時間および最
大酸素摂取量については,いずれの項目においても両群間の差はみられなかった.
3.練習中のエネルギー消費量は上級群の方が下級群よりも大きな値を示した.また,練習中のエネルギー消費量と皮下脂肪厚・握力・背筋
力・脚伸展力およびPWC170の間には相関が認められた.
以上の結果により,本研究の対象とした競技水準がごく一般的なバレーボール部の練習では,技能水準の高い者ほど活動する機会が多くな
り,それが体力水準の向上につながることが示唆されたといえよう.しかし,本研究の前報では技能水準の高い中学校サッカー部を対象にし
ているが,そこでも本報告と同様の結果を得ている.このことから・中学校運動部活動では技能の個人差が活動内容に影響を及ぼし,そのこ
とが体力の発達にも関与するのではないかという推測は一般的見解とみなしてもよいのではないかと考えられる.
稲山たちの報告について
本報告は,上記吉田たちが対象とした中学校女子バレーボール部員の食生活の実態調査の結果である.形態測定,連続3日間にわたりレンズ付
きフィルムを利用した食事記録調査,自記式質問調査を行い,食教育の方向性について考究している.
報告されている内容は以下のとおりである.
1.3日間の平均栄養摂取状況ならびに栄養素密度からみた所要量に対する充足率から・脂質エネルギー比が高い,カルシウムならびに食物繊
維の摂取量が少ないという問題点が明らかになった.
2.体重当たりのエネルギー摂取量,PFC比,栄養素密度からみた所要量に対する充足率といった基準化されたデータを用いた主成分分析によっ
て3因子を抽出した結果,食事全体の構造として「主食や副菜料理の摂取」「主菜料理や乳・乳製品の摂取」「エネルギー摂取」といった特徴
がみられた.
3.この3因子の個人毎の因子得点と形態測定結果ならびに質問紙調査結果から得られた変数との間にいくつかの興味深い関連が認められた.
例えば,第2因子「主菜料理や乳・乳製品の摂取」は体重,「コンビニでは甘くない飲料を買う」との間に正の相関を示した.第3因子「エネル
ギー摂取」は体重,BMIとの間にそれぞれ正の相関を示す一方,「間食や夜食では甘くない菓子を食べる」「家族から栄養に関する情報を得て
いる」との間に負の相関が認められた.
4.このような関連性から,本研究の対象集団では食意識や食情報に対する関心を高める,間食や夜食の取り方,上手なコンビニの利用方法などに
注目した食教育の展開が考えられた.
本報告は,中学校男子サッカー部員を対象にして行われた前報を継続するものである.調査結果に基づき栄養上の具体的問題点をよく指摘してい
る.前報で,食習慣の自立期である中学生期に将来の健康につながるような適切な食習慣を身に付けさせることの必要性を提言しているが,本報告で
も実際的な食教育の重要性を述べている.
以前に比べて現在の食糧事情は非常に豊かになっているが,運動選手の食生活が充実しているとは限らないという指摘がしばしばなされている.
前報・本報は発育の盛んな中学生運動部員を対象にした調査結果であるだけに,そこで得られた結果とそれによる提言は重要である.
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