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2.成人病のリスクファクター

 発育期の青少年はかからないが、中年・高年の人達がかかる病気を一般に成人病と呼んでいる。成人病には多くの種類があ るが、それらの中で最も死亡率の高いのは「虚血性心臓病」と「脳卒中」である。
 虚血性心臓病というのは、冠状動脈の硬化が原因で心臓の筋肉に十分な血液供給がなされない状態をさした病名で、狭心症 ・心筋梗塞がこれに相当する。脳卒中は、脳の血液循環障害によっておこる急激な意識障害と運動麻痩をともなう状態をさし、 この原因には脳出血と脳軟化がある。
 ある病気をひきおこす危険性のある状態をリスクファクター(riskfactor)=危険因子というが、ここにあげた2つの成人病にも いろいろなリスクファクターが明らかにされている。それらの中で持久的運動によって除去、軽減できると考えられているもの は次に示す各ファクターである。
  1)高脂血症 2)高血圧 3)肥満 4)精神的ストレス
 なお、心臓病・脳卒中のそれぞれのリスクファクターは、そのひとつひとつが単独で病気をひきおこすことよりも、いくつか のファクターが同時に存在したときにそれだけ危険性が高くなることがしられているので、運動の習慣による一部のリスクフ ァクターの除去、軽減は、各ファクターが同時に存在する可能性を減らすことになるのである。

3.運動の効果
 運動を習慣的に行うとその効果として身体には様々な変化が現れるが、どのような変化が現れるかは行う運動の種類・内容 によって異なる。体育科学センターが成人の健康のためにすすめている運動は、軽い負荷である程度長い時間続けるものであ る。これによって生じる効果は、行動体力の面からいえば主として、最大酸素摂取量*の増大や一定負荷に対する心拍数、呼吸数 の減少というような持久力(スタミナ)の向上として現れ、その背景には持久力を構成する生理的因子である呼吸・循環器系の はたらきの改善が見られる。そして、このことは、一面において私達の作業能力を高めるとともに、他方、心臓病や脳卒中の予防と いう防衛体力の維持・向上という効果をもたらしているのである。そして、これらの効果は精神的にも快適な状態をつくりだし てくれるものである。


 最大酸素摂取量というのは、人体が1分間に摂取することのできる酸素量の最大値を指し、この量の大きい人ほどすぐれた 持久性の持ち主である。英語ではmaximal oxygen intake と表現し、略号ではVo2maxと表す。80%Vo2maxというのは、その人のVo2max の80%の酸素里を摂取する運動強度という意味である。体育科学センターの運動処方の研究では、運動強度を表すのにこの 80%Vo2maxを用いている。


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