1.調整力の定義
1.体育科学センター;調整力とは心理的要素を含んだ動きを規定するphysicalresourcesである。
2.猪飼道夫;調整力とは、神経と筋肉との関係であり、主に神経のコントロールにあずかり、そのコントロールの方法として、
(1)筋力の強さの調節(grading)、(2)筋力の空間的調節(spacing)、(3)筋力の時間的調節(timing)の3つにわかれる。
3.松浦義行;身体各部および各運動器を統一して、1つのまとまった全体的または局部的運動を成就する能力である。
4.Singer;ability to perform skilled movement pattern等々である。
したがって、調整力は諸々の運動パターンを成就する時、その運動の成就に関与する身体各部、各機能を運動成就のために統合する能力と考えることが出来るが、この場合、つぎの仮説がその背景に存在する。
生理学的立場では上のBlackboxをつぎのように説明するであろう.
以上の2つの考え方を統合すると、体育科学センター、Singer、松浦の3者の定義はBlack boxの立場に立つものであり、
猪飼の定義は、生理学的立場をBlack boxの立場に加味したものと考えられる。
Singerは「すべての運動成就に共通に関与するような、いわゆる一般協調能力(調整力;coordination)という能力は存在せず、
それぞれの運動パターン特有の協調能力が、その運動パターンの成就には必要とされる。したがって、各々の運動形式パターン
の成就に特有な能力という形で協調能力は発達する。」と述べている。このことから、猪飼の指摘するごとく、筋力の
grading、spacing、timingに加えて、運動成就に特有な筋のgrading、spacing、timingにあずかる能力とする必要があろう。運動成就の調整
が筋力発揮の調整によってなされることから、調整力とは筋力のselecting、grad-ing、spacing、timingにあずかる能力であるといえる。
しかし、測定・評価の立場に立つと、どの程度適格にselectingしているか、gradingしているか、spacingしているか、timingしている
かを知る必要がある。これらを測定することはむずかしい。そこで、測定・評価の立場では、むしろ、Black boxの立場に立って、
運動成就がいかに適切に協調されていたかを測定し、その結果をもって、Black boxの内部を推定しようとする立場に立つこと
が実際的であると考えられる。
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