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 (3)歩行中の重心移動:男性における重心の上下動は歩行速度と、高齢者がr=0.633、若年者がr=0.652(いずれもp<0.01)の有 意な正の相関関係を示し、同一速度で比較すると、高齢群が若年群より大きい傾向を示した(図3,3段目)。歩行中の重心の左右 動は、若年男性においてのみ、歩行速度と負の相関関係r=-0.689(p<0.001)を示した(図3最下段)。高齢群と若年群を平均値で比 較すると、重心の上下動、左右動の両方で、男女とも有意な差は見られなかった。

 (4)最小爪先高、歩隔、足向角:図4は、最小爪先高、歩隔、足向角を歩行速度に対してプロットしたものである。男性の若年群に おける歩行速度は、歩隔(r=−0.576、p<0.01)および足向角(r=-0.456、p<0.05)と有意な負の相関関係を示した。高齢群と若年群を 平均値で比較すると、最小爪先高が男性(p<0.001)、女性(p<0.01)ともに、高齢群の方が有意に高い値を示し、歩隔においては女 性で、高齢群が有意に(p<0.01)小さい値を示した。また、足向角では、男性において、高齢群が有意に(p<0.001)大きい角度を示し た(表1)。


図4 最小爪先高、歩隔、足向角と歩行速度の関係。白が若年群、黒が高齢群を示す。
若rは若年群の相関系数。*はp<0.05、**はp<0.01。           


 (5)重心上下動と歩幅の関係:重心の上下動と歩幅の関係を調べたところ、男性では高齢群がr=0.790(p<0.001)、若年群がr= 0.629(p<0.01)、女性では高齢群がr=0.559、若年群がr=0.703(いずれもp<0.01)の有意な正の相関を示した(図5上段)。重心の上下 動を同一歩幅で比較すると、男性においては、高齢群が若年群よりも大きい傾向を示したが、女性では差が見られなかった。
 (6)重心左右動と歩隔の関係:重心の左右動と歩隔の関係を調べたところ、男性では高齢群がr=0.792(p<0.001)、若年群が r=0.646(p<0.01)、女性では高齢群がr=0.612(p<0.001)、若年群がr=0.715(p<0.01)の有意な正の相関を示した(図5下段)。また、男 女とも高齢群と若年群の回帰直線がほぼ重なり、同一歩隔で比較した高齢群と若年群の重心の左右動に差は見られなかった。



図5 重心上下動と歩幅(上段)、重心左右動と歩隔(下段)の関係。白が若年群、黒が高齢群を示す。
若rは若年群、高rは高齢群の相関系数。**はp<0.01、***はp<0.001。         


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