2.骨密度
本研究の結果より、トレーニング群(週平均トレーニング参加回数:1.0±0.3回)および対照群(週平均トレーニング参加回数
:0.3±0.2回)とも、腰椎骨密度の絶対値に観察期間中において変化は見られなかった。この年代では般的に、加齢により骨密度
は低下する2) 。しかし本研究の被検者は対照群においても腰椎および大腿骨頸部の骨密度の低下が見られなかった。身体運動
量と腰椎および大腿骨頸部の骨密度は関係があることが報告されている2,5,7) 。したがって、本研究で対象とした閉経後女
性において腰椎および大腿骨頸部の骨密度が2年間で低下しなかったことは、1日の歩数に代表される日常の身体活動量、こ
れらの女性では、それほど低下しない4) からであると考えられる。
ランニングなどの抗重力運動と異なり水泳運動中では腰椎や大腿骨に対して、それほど大きな力はかからないと考えられ、
理論的には水泳運動の骨、特に腰椎や大腿骨の骨密度に水泳運動そのものの影響は少ないと考えられる。しかし、筆者らは、水
泳トレーニングにより筋力向上が間接的に骨密度に影響を与えるのではないかという仮説に基づき、本研究で骨密度を測定
した6) 。実際、本研究では、骨密度の絶対値にはトレーニングの影響は観察されなかったが、Z値においてトレーニング群にお
いてのみ有意に上昇した。さらに、脚筋の指標として脚伸展パワーを測定したが、トレーニング群では有意に増加している。
これらの結果は、ある程度水泳トレーニングが腰椎の骨密度に良好な影響を与えていると考えられる。今後、さらにこれらの群
を追跡観察する必要があると考えられる。
まとめ
本研究の結果より、勤労中高年女性の最高酸素摂取量は、水泳トレーニングに週1.5回以上参加すれば増加することが明らか
になった。また、腰椎の骨塩量に対しても水泳トレーニングは良好な影響を与える可能性が示唆された。
文 献
1) 樋口 満たち:中高年女性の血中脂質プロフィールに及ぼす水泳トレーニングの効果.体力科学 45 : 719, 1996.
2)宮下 充正たち:骨粗鬆症予防のための効果的運動療法の研究開発事業報告書.(社)日本エアロピック・フィットネス協会,1992.
3) Sasaki. J. et al. : Elevated levels of HDL2 -
cholesterol and apo A-I in national class Japanese male marathon runners. Atheros-
clerosis 70 : 175-177, 1988.
4)田畑 泉たち:勤労中高年女性の乳酸性作業閾値.体力科学 44 : 672, 1995.
5)田畑 泉たち:運動習慣が中高年女性の骨密度および骨代謝マーカーに与える影響.Osteopor-osis Japan 4 : 548-555, 1996.
6)田畑 泉たち:水泳トレーニングが中高年勤労女性の腰椎の骨密度に及ぼす影響.体力科学 46 : 640, 1997.
7)田畑 泉:健康に関連する体力.体育の科学 47 : 852-857, 1997.
8)田畑 泉:中高年女性の骨塩量維持のための運動処方について.臨床スポーツ医学 15 : 747-750, 1998.
前ページ 目次へ 次ページ