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 研究結果
 1.重心動揺の測定結果(表1)
(1)開眼による重心動揺
 開眼状態で30秒間の総軌跡長(LNG)、単位時間当たりのLNG(LNG/T)および単位面積軌跡長(LNG/EA.)をそれぞれ2回ずつ測定 した結果(n=48)、1回目のLNG、LNG/TおよびLNG/EA.の平均(±SD)はそれぞれ33.4±10.3cm、1.11±0.34cm/sec、22.8±10.4cm/c? であった。1回目と2回目の測定値間にはいずれも有意な差はなかったが、被検者各個人の1回目と2回目の測定値間で相関係数 を求めると、LNG、LNG/T、LNG/E.A.それぞれr=0.728、0.728および0.401(p<0.001)であった。個々人の1回目と2回目の測定値の平均 および標準偏差(SD)から変動係数を求め、48名の平均の変動係数(CV)および範囲を算出した結果、LNG、LNG/TおよびLNG/E.A. それぞれ9.0±6.9(0.3〜29.0)、9.0±6.9(0〜29.2)および19.7±12.1(0.3〜43.5)%であった。なお、開眼による重心動揺測定値とし て、動揺距離の少ない方の値を採用した。
 (2)閉眼による重心動揺
 開眼による重心動揺測定結果の整理と同様に、閉眼時のLNG、LNG/TおよびLNG/EA.の平均値(SD)および1回目と2回目の測定値 間の相関係数や変動係数を算出した。1回目の測定によるLNG、LNG/T、LNG/E.A.それぞれの平均値は、42.1±12.3cm、1.42±0.41cm/ secおよび22.8±9.9cm/c?であり、1回目と2回目の測定の相関係数はそれぞれr=0.778、0.757および0.729であった。また、変動係数 および範囲はそれぞれ8.5±6.8(0.33〜32.6)、8.8±7.0(0.2〜32.8)、15.3±11.3(0.01〜57.8)%であり、開眼時の測定値間にみられた 変動係数および範囲と近似していた。なお、閉眼による重心動揺測定値として、開眼の場合と同様小さい値を採用した(表1)。
 (3)開眼と閉眼による重心動揺の比較
 開・閉眼ともそれぞれ交互に2回ずつ測定したが、上述のように1回目と2回目の測定値間の相関係数が予測したほどには高 くなかったので、各被検者の平均値ではなく小さい方のLNG、LNG/T、LNG/E.A.を採用し、開眼と閉眼時の測定結果を比較した。48 名の閉眼時LNGの平均値は39.1±12.0cmで、開眼時の値(30.2±8.9cm)に比較し1.3倍の高値であった(p<0.001)。同様に、LNG/Tお よびLNG/E.A.についてはそれぞれ1.318、1.131であった。一方、開眼時と閉眼時の測定値間の相関係数を算出した結果、LNG、LNG/ T、LNG/E.A.それぞれr=0.528、0.558および0.681(p<0.001)であり、それほど高い相関関係は示されなかった。

Table 1. Postural sways in the normal Romberg position
     and one-leg balancing with opened and closed
eyes in nomal young females.     

 2.片足立ち保持時間の測定結果(表1)
 (1)開眼による片足立ち保持時間
 利き足を支持足として合計3回、開眼による片足立ち保持時間を測定した。なお、20秒以上保持した場合、そこで打ち切りとし た。延べ施行回数144回(48名×3回)のうち112回(77.8%)が120秒以上であった。3回の測定値のうち最も大きい値を片足立ち保持 時間として採用した結果、48名の平均片足立ち保持時間は113.3±18.3秒であった(表1).
 (2)閉眼による片足立ち保持時間
 48名の被検者それぞれの1回目と2回目、1回目と3回目および2回目と3回目の閉眼による片足立ち保持時間の相関係数を算出 した結果、それぞれ0.735、0.782および0.719(p<0.001)であった。次いで、各被検者それぞれ3回づつ測定しているので各被検者の 測定値のバラツキ(変動係数;CV)を求め、48名の平均CVと範囲を算出した。その結果、平均CVは37.0±23.8%で、範囲は0〜91.1%で あり、大きなバラツキを示し再現性の劣る測定項目であった。ここでは,閉眼片足立ち保持時間として、3回の測定値のうち最も大 きい値を採用し表1に示した.
 (3)開眼と閉眼による片足立ち保持時間の比較
 各被検者それぞれ3回づつ測定した開眼および閉眼片足立ち保持時間のうち最も大きい値を採用したが、120秒以上保持した 場合でも120秒とした。採用されたこれらの測定値を用いて開眼と閉眼時の値の相関係数を求めたが、r=0.332(p<0.05)の低い相 関係数しか得られなかった。また、閉眼時の保持時間は45.5±32.9秒、開眼時は113.3±18.3秒であり、ロンベルグ比個眼/開眼片 足保持時間)は0.389±0.266であった。


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