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 考  察
 筆者らの知る限り、Jリーグ傘下のジュニアユースサッカー選手のまとまった報告はない。そこで、日本人の平均値と考えられ る「日本人の体力標準表」4)に掲載されている測定項目のうち、本研究と同じ項目について比較することにより、本研究の被検 者の特徴を検討する。形態については、身長の13歳(本研究での1年生に相当、以下同様)の平均値は158.4cm、14歳(本研究での2年生 に相当、以下同様)は164.0cmであって、表1に示した本研究の被検者の身長はほとんど同じであった。体重は13歳の平均値は47.2kg、 14歳は52.3kgで、これもほとんど同じであった。
 機能については、50m走では13歳が7.94秒、14歳が7.62秒であり、表3に示したように本被検者が優れる傾向にあった。Vo2maxは、 13歳が2.15l/分、14歳が2.45l/分であり、本被検者は大きく上回った。またVo2max/wtは、13歳が49.0ml/kg/分、14歳が49.2ml/kg/分で、こ れも本被検者は大きく上回った。最大心拍数は、13歳が195.3拍/分、14歳が194.9拍/分で、本被検者もほとんど同じであった。ところ で最大酸素摂取量については、小林2)が本研究と同年代の競技者の報告をしている。小林は男子ジュニア陸上中長距離優秀選手 をトレッドミル走にて測定しているが、それによると平均14.8歳での選手のVo2maxは3.54l/分、Vo2max/wtでは65.4ml/kg/分である。 小林の報告との比較では、本研究での被検者は劣ることが分かった。
 以上のように、本研究の被検者は同世代の日本人の平均的体力と比較すれば、形態はほとんど同じであるが、短距離走と全身持 久能力にて優れていることが分かった。しかし、全身持久能力は陸上中長距離優秀選手ほどではない事が分かった。また、測定項目 によっては、1年生よりも2年生が必ずしも優れているわけではなかった。その原因を検討するに十分な資料はないが、このような 発育途上にあるスポーツ選手については、今後、縦断的研究を続ける事で、体力の推移を観察することが不可欠であると考えてい る。
 一方、栄養摂取状況については、調査結果によればほとんどの項目が100%を超える充足率であった。この事から、本研究を行うに 当たって保護者に説明をし理解を求めた内容の食事が、家庭にて本被検者に提供されていたものと考えられる。

 要  約
 某Jリーグ傘下のジュニアユースサッカー選手の体力と栄養摂取に関する測定と調査を行ったが、その結果の要点は以下のと おりである。
 1.被検者は13〜14歳の男子で、中学1年生11人と2年生13人であった。サッカー暦は6〜7年であり、このチームに所属して3年で あった。
 2.身長と体重は同年代の平均値とほとんど同じであった。
 3.50m走、Vo2maxおよびVo2max/wtは同年代の平均値よりも優れていた。しかし、最大酸素摂取量は同年代の陸上中長距離優秀選手 よりは劣っていた。
 4.栄養摂取調査の結果,保護者が作成した食事は予定した栄養所要量をほとんどの項目で充足していた。

文  献
 1)北川薫,高見京太,宮城修,桜井佳世,小川勝之:HealthRelated PhysicaIFitness Testとしての体脂肪量の測定法.J.J.Sports Sci.7:655-660,1993.
 2)小林寛道:日本人のエアロピック・パワー加齢による体力推移とトレーニングの影響一.pp.20-38,杏林書院,1982.
 3)高見京太、水口弘、山根秋博、北川薫:栄養所要量から見た栄養摂取に関する研究一大学男子スポーツ競技者および非競技者 について保健の科学10:691-695,1994.
 4)東京都立大学体育学研究室(編):日本人の体力標準値第4版.pp.22,56,133,238,241,275.不昧堂,1989.
 5)宮下充正(編著):一般人・スポーツ選手のための体力診断システム初版,pp64-67.ソニー企業,1986.


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