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北川たちの報告について
 本報告は、J.リーグ傘下のジュニアユースサッカー選手を対象としたものである。彼 らと同年齢の日本人男子中学生との体力の比較を行っているが、その結果、形態的にはほ とんど同じであるが、短距離走能力と全身持久能力については優れていることが明らかに されている。 しかし、全身持久能力はジュニア陸上中長距離選手には及ばないという。 ま た、測定項目によっては、2年生選手が必ずしも1年生選手を上回ってはいないという結 果も得ている。 現段階でこの原因を検討することはできないが、このように発育途上にあ るスポーツ選手については、今後、縦断的手法による体力の推移の観察が必要であること を提言している。
 本報告では被験者の栄養摂取状態についても調べているが、これについては好ましい結 果が得られたと述べている。この結果については、事前に、保護者へのクラブ所属の栄養 士による栄養と献立についての指導が有効であったと考えられるということである。  J.リーグ傘下のジュニアユースサッカー選手は、これまでの日本のスポーツ選手とは 異なる存在である。それだけに、彼らを対象にした本研究はこれからの発展が期待される 大切な研究といえよう。 今後、発育期の青少年のスポーツが従来の学校スポーツだけでは なく、社会スポーツ、地域スポーツとしても拡がりを見せることは十分に予測されること であるだけに、この種の研究は貴重であろう。

金久たちの報告について
 本報告では、サッカー部に所属する高校生男子と活動的な成人男子を対象に、トルクモー ター型エルゴメーターによる間欠的全力走を与え、走運動中の牽引力、ベルト速度、及び、 それらの積による走パワーを測定し、それらの結果の比較から、高校期における定期的な 身体活動の実施が、間欠的全力運動時の発揮パワーに及ぼす影響を調べている。
 その結果、体重当たりの牽引力とベルト速度は10セットの反復運動の前半の部分で成人 が高校生よりも優位に高い値を示したが、各測定パラメーターにおける運動後半の値には、 両者の間に優位な差は認められず、低下率は牽引力、ベルト速度、走パワーにおいて高校 生が成人よりも有意に低かったという。 報告では、このような高校生と成人の違いが無酸 素系エネルギー供給能あるいは走動作の様式、またはそれら両方における差に起因するも のかを明らかにすることは、今後の検討課題としている。
 青少年期における体力、運動能力の発達に関する研究は多く見られるが、その中で無酸 素性パワーについてのものは少なく、特に、間欠的全力運動時の発揮パワーの発達過程に ついての報告例は無いようである。したがって、本報告はこの領域への研究の着手として の意義を持つものである。得られた結果についての検討は、現段階では不十分であるが、 これからの発展に期待したい。


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