表5にGHQ12の各項日毎の出現頻度を示した。“たびたびあった”や“あった”の出現頻度が高かった質問項目は、項目5「いつもストレスを感じたことがありましたか?」(それぞれ約12%、約29%)、項目2「心配事があって、よく眠れないことはありましたか?」(それぞれ約11%、約19%)、項目9「いつもより気が重く憂うつになることはありましたか?」(それぞれ約9%、約20%)、項目12「一般的にみて、しあわせといつもより感じたことはありましたか?」(それぞれ約7%、約38%)であった。
表6にPSQIの各項目毎の出現頻度を示した。過去1ヶ月間において“1週間に3回以上”と答えたものの出現頻度が高かった質問項目は、項目1「寝床についてから30分以内に眠ることができなかった」(約16%)、項目3「トイレに起きた」(約14%)、項目2「夜間早朝に目が覚めた」(約12%)であった。睡眠が困難であるその他の理由を挙げた38人(約14%)の内訳は、「介護」25人、「心配事や考え事や将来の不安」5人、「家人の物音等」4人、「授乳」1人、無回答3人であった。項目12自分の睡眠の質をどのように評価しますか?」という質問に対し“わるい”と答えたものが約23%、“非常にわるい”と答えたものが約3%いた。
表7-1および表7-2に被介護者の状態(寝たきり度、痴呆による自立度、ADL)別にみた主介護者のZBI、GHQ12、PSQIの各総得点の平均値を比較し示した。ZBI総得点の平均値は、被介護者の寝たきり度、痴呆による自立度、ADLのすべてにおいて群間有意確率P<0.05を示し、被介護者がほぼ自立している状態のものに対し、そうでない状態の被介護者を介護する者の平均値が有意に高かった。GHQ12およびPSQIの各総得点の平均値は、被介護者の痴呆による自立度における群間有意確率のみがP<0.05を示し、被介護者が何らかの痴呆を有していても日常生活がほぼ自立している状態のものに対し、常時介護を必要としたり専門医療を必要としたりする状態のものを介護する者の平均値が有意に高かった。
なお、ZBI総得点とGHQ12総得点、ZBI総得点とPSQI総得点、GHQ12総得点とPSQI総得点のPearson相関係数は、それぞれ0.56(P<0.00)、0.31(P<0.00)、0.32(P<0.00)であった。
表8に主介護者の精神的健康度と介護負担関連要因との相関を示した。GHQ12総得点の3/4区分点を用い、4点以上を精神的健康度のわるいもの、3点以下を精神的健康度のよいものとして2分した。単変量解析および多変量解による結果はともに、被介護者が何らかの痴呆を有していても日常生活がほぼ自立している状態のものに対し、常時介護を必要としたり専門医療を必要としたりする状態のものを介護する主介護者の精神的健康度が有意にわるかった。それぞれのオッズ比および95%信頼区間は、5.7(2.0-16.3)、6.0(1.8-19.8)であった。また同様に、在宅介護を支援する者を持たない主介護者は支援する者を有する主介護者に対し、主介護者の精神的健康度が有意にわるかった。それぞれのオッズ比および95%信頼区間は、3.3(1.4-7.6)、3.7(1.4-9.6)であった。主介護者の性、年齢、被介護者の寝たきり度、サービス利用の有無は主介護者の精神的健康度には有意に関与していなかった。
?.考察
本研究の対象者である主介護者および被介護者ともに女性が7、8割を占めており、また、約半数が高齢者が高齢者を介護するという実態が明らかになった。主介護者の背景をみると、7割が2世帯以上で家族と同居しており、半数が仕事を持っているものの農業などの自営業が主であり、1週間の勤務時間が50時間を超えるものは少ないことなどから、都会に比べ従来型の家族構成の中で比較的ゆったりとしたライフスタイルが営まれているのが対象地域である天草地域の特色であると思われる。高齢化の進行が著しいため、約4世帯に1世帯が65歳以上の夫婦(両方またはどちらか一方)のみ、または被介護者のみの独居世帯である点もこの地域の特徴であると思われる。
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