? 考察
近年、胃癌組織に,Lea抗原の発現の上昇がみられるという観察が集積し7〜10)、特に、本来Lea抗原を表現しないLe(a-b+)型者では、これを明らかに確認できることから、Lewis式血液型抗原を細胞の癌化の指標に見立てる意見も出ている。
胃癌には、慢性炎症による粘膜の腸上皮化生を経由して発生するという考えがある(慢性胃炎―腸上皮化生―胃癌シークエンス)。組織学的に腸型胃癌と分類されるものが、これに相当し、特に、腸上皮化生を示す粘膜で、Lea抗原の発現がみられることから、Lewis式血液型抗原の発現パターンの差違で、胃癌を分類できる可能性も提言されている。
これらの知見は免疫組織学的手法で得られており、詳細な腫瘍や組織分類のマーカーになり得る論拠があれば、Lewis式血液型抗原は、臨床的にさらに有用性を増す。
われわれは、Lewis式抗原の発現における分子機構を調査した。Le酵素は、消化管上皮でのみ発現し、胃、大腸粘膜組織ではLea抗原を合成する唯一の酵素であることが判っている。
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