? 対象と方法
胃内視鏡を受け、内視鏡および組織学的に正常もしくは軽度胃炎とされた16例、同様に判定された胃癌例(組織学的に中・高分化型腺癌)10例を対象とした。このうち、採血によるLewis式血液型がLe(a+b-)型およびLe(a-b-)型者は、今回の検討からは除外した。検討対象は、Le(a-b+)型の、正常もしくは軽度胃炎を有した14例(平均年齢65.4歳、男10例、女4例)、胃癌を有した8例(平均年齢69.8歳、男6例、女2例)となった.
今回、われわれは、reverse transcriptase polymerase chainreaction(RT-PCR)法を用いて、LeおよびSe酵素遺伝子のメッセンジャーRNA転写量をみることとした。対象から、胃内視鏡時に生検して胃粘膜を採取した。生検は、正常もしくは軽度胃炎例では胃幽門前庭部より、胃癌例では癌部より行った。粘膜組織は、採取後直ちにグアニジンチオシアネート混バッファーで調整した。組織のRNAはAGPC法にて抽出した。LeおよびSe酵素遺伝子には多型性があり、既にPCR法による判定法が提示されている4〜6)。Le酵素遺伝子のRT-PCR法には、その判定法で用いられたcDNA核酸番号636から660に相当するプライマー5'-ACTTGGAGCCACCCCCTAACTGCCA-3'およびcDNA核酸番号817から841に相当するプライマー5'-TGAGTCCGGCTTCCAGTTGGACACC-3'を用いた。One step RT-PCRの条件は、RT-PCR反応液25μl中に、10×buffer 2.5μl,reversetranscriptase 2.5U,RNase inhibitor 20U,Taq polymerase 2.5U,dNTP 各0.1mM,MgCl2 0.25mM(One step RNA PCR kit(AMV)、TaKaRa社、Japan)、各プライマー濃度 45pmol、 抽出 RNA 100ng となるように調整し、 PC-960GGradient Thermal Cycler(Corbett Research社、 Australia)にて、 50℃、 30分、 94℃、 2分で1サイクル(RT反応)、 続いて94℃、 1分(変性)、 65℃、2分(プライマー結合)、72℃、2分(伸張)で35サイクル、さらに72℃、7分、25℃、1分で1サイクルの増幅を行った。 RT-PCR産物は、 ethidiumbromide(5μl)を含む3%アガロース電気泳動にて分画してUV下で観察し,、ポラロイド写真に撮像後、 EDAS120(COSMO B10社、Japan)で、バンドの強度を評価した。
他方、Se酵素遺伝子については、既報の多型判定の条件6)がNested-PCR法に基づいており、RT-PCR法の定量性をより厳密にするため、われわれは、1回の連続するRT-PCR反応で済むように若干の工夫をした。すなわち、一方のプライマーは、既報6)に示された核酸番号451から480に相当する5'-AACGACTGGATGGAGGAGGAATACCGCCAC-3'を使用したが、もう一方は、新たにcDNA核酸番号682から705に相当する5'-CCTTCCACACTTTTGGCATGACATG-3'の部分をプライマーとして用いて解析に供した。
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