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 医師以外の関係では、保健婦、ホームヘルパー、看護婦、.医師などが、診察して発見した健康問題も散見される。

F この研究の限界と制約
1、診断の精度の問題 これは、多数の医師によりプライマリ・ケア国際分類を利用するにあたり、避けられない点で、練習問題やワークショップなどを通じて可能な限り、精度を向上させる必要がある。
2、分類体系の限界 プライマリ・ケア国際分類の体系自体に、異なる病態を一つのコードで表現するような限界がある。たとえば、脳梗塞と脳出血がともにK90とコードされるなどである。
3、頻度の低い健康問題の問題 登録患者数を増やして対処するほかない。
4、確定診断をつけるのが困難であるという問題 今回のサーベイランスには、また、画像診断や血液検査が可能ならば容易に診断に至るが、在宅患者であるために確定診断がつけられにくいという制約もある。
5、患者集団がへき地の在宅患者を代表しているかどうかという問題 現状では、へき地の定義にあてはまる診療所を選択する方法がないことからへき地診療所の悉皆調査は実行不可能であり、相対的に妥当性の高い一部の診療所を選択せざるを得ない。この研究では、各都道府県が指定したへき地勤務が義務付けられている自治医科大学卒業生から診療所勤務の医師を選び、都市部の診療所と産婦人科、皮膚科、眼科、整形外科などの単科開業医を除外して研究への参加を募った。実行性の点でこのような方法しか取り得ないと思われる。

G 将来の展望
1、西暦2000年の介護保険制度施行を見越して、在宅患者のADLや痴呆の状況、社会資源の利用の状況を調査し、介護保険前後を比較することが可能であり、へき地の介護・福祉のあり方を考える上で有用な資料を提供できるであろう。
2、一般に、へき地では医療機関、特に入院施設が不足しているため、また、あっても遠いため、入院が都市部よりは困難なのでより医療依存度の高い患者が在宅になることが多いかもしれない。今回のサーベイランスでも胃ろう、気管切開、膀胱留置カテーテル、在宅酸素療法など何らかの医療を継続的に必要とする患者がいる。これらの頻度をあきらかにすることで、ケアの手間の見積もりも可能になる。
3、へき地勤務の医療従事者に要求される知識、技能について予想でなく、実際に必要なことが何で、どのくらいの業務量になるのかを見積もることが可能になり、自治医科大学の卒後研修プログラムや卒前教育に反映させることが期待される。

 

 

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