日本財団 図書館



しかし、その種類は、表3に見るように
 同じ問題が重複して出現するので、単純には比較できないが、1回のENCONTERで1.99件もの健康問題があるとすると、週に5件の往診/訪問診療をすると10件の健康問題と取り組まなくてはならなくなる。1か月では約40件にも上る。往診/訪問診療に携わる医師は、このような量の健康問題に的確に対処することを求められる。

C 健康問題の頻度prevalence(表2、図1)
 在宅医療を受ける患者は、寝たきりかそれに近いADLの患者が想像される。健康問題の頻度を見ても脳卒中がもっとも多く、それに消化器系の問題を併せ持っているものと思われる。しかし、実際のADLの分布は明確でない。一般に寝たきりの原因として脳卒中、慢性関節リウマチ、骨折などが挙げられているが、脳卒中以外はこの解析時点では見出せなかった。今後この患者集団について、ADL(厚生省寝たきり度基準)や痴呆の分布について明らかにしていく必要がある。また、横断研究だけでなく、観察期間を設定したコホートで人日あたりの頻度として表現していくことが必要になってくると思われる。

D 健康問題の臓器系統等別頻度(表3、図2)
 脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、狭心症はいずれもK心血管系になり、もっとも多い。プライマリ・ケア国際分類による系統は17に分割されるが、いずれの系統にも分布していることがわかる。すなわち、在宅医療設定では、起こっている健康問題は、特定の臓器に集中せず、多系統で起こることを年頭において診療をすすめなくてはならない。このような多様な問題に対処するためには、特定の臓器にのみ関心を傾けるのでなく、全体をみることができる医師を養成することが肝要である。
 なお、高血圧症は、合併症として脳梗塞、心筋梗塞などがあるものとないものに分けてコード化されるが、合計の高血圧者は19人で脳卒中予備軍として、また、その他の臓器障害を防ぐための方策が依然重要であることがわかる。

E 主訴および来診理由(表4、表5)
 主訴および/または来診理由はありふれた症状が主に急性の健康問題に相当し、診察や薬・注射の要求が慢性の健康問題に対応しているものと思われる。予防接種や社会福祉サービス利用のための書類作成は、へき地の診療所が単に急性の健康問題を扱うだけでなく、地域の福祉や公衆衛生活動に深く関わっていることを示している。

 

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION