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 E.PCR法による各エクソンの増幅:
 PAI-1遺伝子のイントロン/エクソン接合部を含む全エクソン領域とともに5'近接領域を含めて検索するために、PCRプライマーを表1に示すように設計した。PCR反応は、Ex Taq DNAポリメラーゼまたはAmpli Tag GOLD(宝酒造、京都)を用いて、94℃-20秒〜1分(変性反応)、57〜63℃-1分(アニーリング反応)、72℃-0〜1分(伸長反応)で30サイクルの増幅反応を行った。PCR増幅物は、1.5%アガロースゲルで電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色した。
 F.PAI-1遺伝子の塩基配列の解析:
 Genomic DNAのPCR産物をpCR2.1クローニングベクター(Invitrogen,Netherland)ヘクローニングの後、PAI-1遺伝子の塩基配列を蛍光標識プライマーとオートシークェンサー(ABI-パーキンェルマージャパン,model 373A)を用いたサイクルシークエンス法により決定した。さらに変異部位は、2種のプライマーの量を50:1として行った非対称PCR法により得られた1本鎖DNAを、35-S dATPとSequcnasc(Amersham,Buckinghamshire,UK)によるダイデオキシターミネーター法を用いた直接塩基配列決定法(direct sequcncingmethod)により解析した。

?. 結 果

 A.PAI-1抗原量の測定:
 発端者の血漿中PAI-1抗原量は3.0ng/ml未満(正常値20-30ng/ml)および血清中のPAI-1抗原量は56.8ng/ml(正常値200-300ng/ml)といずれも著明に低下していた(図1)。家系内の有症状者のPAI-1抗原量も血漿中、血清中ともに低値であり、特に血漿中の抗原量がより低下していた。このことから、本家系でみられる後出血を主症状とする出血傾向が、PAI-1の欠乏に起因することが明らかとなった。
 B.Genomic DNAのサザンプロット法による解析:
 PAI-1遺伝子の欠失、挿入を有無を検索するため、正常者および発端者(図1、?-2)のGcnomic DNAを制限酵素EooRIを用いて消化後、32P-dCTP標識PAI-1cDNAをプローブとしてサザンプロット法による解析を行った。発端者では、正常者と同様に7.OKbpと1.7Kbpの2本のバンドがみられ、制限酵素多型に相違はみられなかった(図2)。すなわち、発端者のPAI-1遺伝子には大きな欠失および挿入はないものと考えられた。  

 

 

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