PAI-1は血小板中のα顆粒に蓄積され、血液凝固機転に際し血小板から放出される。PAI-1の低下は、α2-プラスミンインヒビター欠損症に類似した線溶系の亢進状態を引き起こし、第??因子欠損症とともに後出血を特徴とする出血性素因の原因となりうるが、その報告例は極めて少なく十分な解析が進んでいない。
?. 対象および方法
本研究は、発端者および家系構成員に対し、研究の趣旨、目的を十分に説明し同意を得たうえで行われた。
A.症 例:
発端者は抜歯後の再出血を主症状として来院した50歳台の女性で、第一子出産後、輸血を要する程度の重篤な再出血をきたした既往がある。発端者の家系には、鼻出血や打撲部の紫斑といった比較的軽度の出血傾向や、ドレナージを要する膝関節の反復性血腫、あるいは発端者と同様に出産時の輸血を必要とするような重篤な後出血を呈するものがみられる(図1)。発端者の血小板数、出血時間、Prothrombin timc、Partial-thromboplastin timc、第?、第?、および第??因子はいずれも正常範囲内であり、またvon Willebrand因子さらにα2-プラスミンインヒビター活性値、組織型プラスミノゲンアクチベータ活性値にも異常はみられなかった。一方、ユーグロブリン溶解時間は短縮していた。
B.PAI-1抗原量の測定:
血漿および血清中のPAI-1抗原量は、抗PAI-1ポリクローナル抗体をラテックス粒子に固相化しラテックス凝集法(LPIA-100,ダイアトロン,東京)により測定した。
C.ゲノムDNAの調整:
正常者および患者ゲノムDNAは、クエン酸ナリウム添加末梢血白血球から得られた核分画をSDSおよびProtcinase Kで処理し、フェノール/クロロフォルム抽出後、エタノール沈澱法にて調製した。
D.Genomic DNAのサザンブロット法による解析:
正常者および患者抹消血白血球から調整したGemonic DNAを、制限酵素EcoRIを用いて消化後、32P-dCTPで標識したPAI-1 cDNAとハイブリダイゼーションを行い、サザンプロット法により解析した。
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