しかし、この方法にも精度に関する問題点があり、空間的にも時間的にも平均流速を求めにくいため、最高流速値と断面積の積に動物、ファントムを用いて算出した0.5から0.7程度の係数を用いて流量とせねばならなかった。また、特に腹部領域においては、3.5または3.75MHzなどの比較的低い周波数の探触子を用いて測定するため、信頼できる計測が?単位と血管面積の算出が不正確になる問題もあった。
そこでこの研究では、超音波法を用いたこれらの計測法の欠点を考慮し、以前発表したカラードプラ法を用いた速度プロファイル法を応用した流量計測法を用いて検討した8)9)10)。この方法の利点は、計測に血管断面積の計測を使用しないためにこの部分での誤差要因が少ない点、プロファイルの形に影響されないために動物実験などで求められていた係数が必要ないことである。
本手法の特長は、パソコンなどの特別な装置を必要とせずに超音波装置で演算を行うこと、ビデオ信号として出された信号を使用しないためよりもとの信号に忠実でBモード像による輝度の影響を受けにくいこと、プロファイルのピークが血管中心から変移した場合でも軸対象であれば計測できることである。装置の中でそのまま計測できる長所は、通常の検査に引き続き計測することで検者の視覚的な経験が生かされ、計測値の良否についての判断・解釈が容易な点である。
一方測定に関する注意点は、計測がカラードプラ信号をもとに作成されているため、得られる画像信号の良否が計測値に大きい影響を与えることは言うまでもないが、他のカラー表示に関係する装置設定すべてが影響すると考えられる。たとえば速度については、フィルタの性質により一部の流速成分が検出しにくくなる可能性がある。動脈血流をとらえる場合に、高流速を基準にすると流速の低いものは表示されにくくなるため、拡張期の低流速部分が表示されにくくなる可能性があり、血流の性質によりフィルタを適切に選択することが求められる。
時間分解能については、カラードプラ法により表示されるためフレームレートに制限があり、少なくなると1心拍分を表示するフレーム数が減るため誤差が大きくなる可能性があり、理論的には多い方が望ましい。現在の表示ではフレームレイトを15〜25Hzとすると時間分解能が40〜70msecとなり、頻脈患者では分解能が十分でない可能性がある。血管の形態については、現在のシステムでは断面積を円形と仮定しているため静脈などの非円形の血管については適応できない。
既に報告したファントムを用いた実験的検討では9)、流量と計測値の相関係数が非常によい点(r=0.999)と両者の傾きが0.89であり、本方法は基礎的に精度が高いと考えられ、一方、雑種成犬の総腸骨動脈を用いて電磁流量計とこの測定法のそれぞれの計測値を比較したものでも10)、相関係数が0.97と両者に非常に良好な相関がみられている。
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