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C.検討3 下肢動脈の測定

1.対象
 自治医科大学および黒須病院などの地域の関連の病院の患者を対象とした。下肢の病変を持たない男女10名で原疾患は高血圧、脳梗塞などをコントロール群(年齢、19歳から85歳、平均年齢68.2歳)とし、10年以上の経過により何らかの合併症をもつ糖尿病の3名をDM群(年齢63歳から71歳)、下肢の狭窄性病変を持つもの2名をASO群(年齢73歳女性と80歳男性)とした。測定部はソケイ部の外腸骨動脈である。

2.方法
 測定装置は、上記と同じAloka SSD2000で、探触子は7.5MHzのリニア型を用いた。測定は安静仰臥位で複数回行った。

3.結果
 コントロール群は右側で385±137ml/minであり、左側は323±103ml/minであった。糖尿病群は右407±21ml/min、左361±15ml/minで健常群よりやや大きい値を示した。今回の糖尿病の症例には含まれていないが1例下肢の虚血症状があり、サーモグラフィーで陽性とされた例でalprostadil(プロスタグランジンE1製剤)の点滴中に計測を行ったが、この例では右677ml/min、左619ml/minと著明な増加を示していた。閉塞性動脈硬化症の2例では、1例は間歇跛行が見られ50メートルしか歩ず、この例での流量は健常側が249ml/minで患側が13ml/minと著明な低下を示していた。もう1例は左側の動脈硬化性変化を血管造影で指摘されていたが、健側の361ml/minとくらべ223ml/minと患側で低下を示した。

?.考察
 血流量の計測は、血管病変のみでなく臓器病変の評価にも有用であり、定量的な試みがなされてきた。その中で、血管の流量を測定するものとしては、電磁流量計、核磁気共鳴法2)3)、超音波を用いた方法ではパルスドブラ法4)5)、transit-time流量計6)、流量計測専用に開発された装置(QFM法)7)などが用いられてきた。
 しかしこれらの方法は、電磁流量計およびtransit-time流量計が直接血管に計測部を設置せねばならず非侵襲的には行えないこと、核磁気共鳴法は煩雑であるだけでなく計測が一般的でないこと、QFM法は精度非侵襲性ともに評価されているが、頚動脈を主な計測対象とした比較的特殊な装置である欠点を有するため、腹部を中心とした臨床研究には体外から無侵襲的に計測できる超音波パルスドブラ法が多く用いられてきた。

 

 

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